『富士日記(下)』
武田百合子
中公文庫
図書館で借りて途中まで読んだけど読み終わらないまま返却。あらためて借りたらメモしていたページがあわない。前回借りたのが新版(2018年発行)で、こちらは1997年発行の改版だった。どこがどう違うかわからないけれど最初から読み直す。
『富士日記』は武田泰淳が亡くなったあと昭和51年7月から9月の日記を追悼号に寄稿したのが始まりらしいですが、その時期はいわば「最後の夏」であり、昭和46年10月に武田泰淳が倒れてからは体調を気づかいながら暮らしているようなところもあり、『富士日記』の中でも暗い雰囲気が漂う。それでも注目されたというのはやはり百合子さん独特の視点、ユニークさが光っていたんではと思います。
四十雀が「蛙か、ソフィアローレンのような顔になる」とか、子犬が「ふなふなふなふな歩いて」いるとか、「女の下着のような藤色の空」とか、もう一文がすごい。
2020年に上巻、2022年に中巻、2023年に下巻と3年かけて読了したわけですが、13年間くらいの日記なので13年ぐらいかけて読むのが理想的なのかもしれない。
下巻の最後のほうは、武田さんの体調が悪くなっていくと同時に、もうすぐ読み終わってしまうと思うと読み進めるのが辛かったです。