『ハローサマー、グッドバイ』
マイクル・コーニイ
山岸真 訳
河出文庫
夏に読みたいSFということで選びました。
夏の休暇に訪れた港町。政府高官の息子と宿屋の娘の恋、近づいてくる粘流(グルーム)、戦争、政府と町民たちの対立などなど。
冒頭には「これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF小説であり、さらにもっとほかの多くのものでもある。」とあるように盛り沢山なのですが、正直、恋愛小説としてもSF小説としてもなんとなく微妙な読後感。
まあ最大の難点はヒロインであるブラウンアイズがかわいいだけでまったく魅力的でないところ。少し内気で無垢な少女が主人公に対してだけは積極的って、昔のエロゲーのヒロインかと。他の女の子にあからさまにヤキモチやくとかもうざいわ〜。
SF部分はなかなかおもしろいんですが、世界設定がわかりづらく、前半は夏の田舎の港町みたいな雰囲気で読みました。
後半がちょっとアンナ・カヴァンの『氷』に似ているなと思ったんですが、どちらも元サンリオSF文庫からの復刊。『氷』の原書が1967年、『ハローサマー、グッドバイ』が1975年。冷戦時代なので世界の終わりがストーリーになるのかなと。
恋と政治、戦争などを経て、ひと夏のうちに成長していく主人公というのはおもしろいので、ここがもうちょっと欲しかったところです。
「この夏のあと、ぼくたちはだれひとり、前と同じじゃなくなっているだろう……それがこわいって思うこともある。すごくたくさんのものを、すごい早さで失ってるような感じがして。」