2022/10/26

『くじ』

くじ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

くじ
シャーリイ・ジャクスン
深町眞理子 訳
ハヤカワ・ミステリ文庫

『ずっとお城で暮らしてる』のシャーリイ・ジャクスンの短編集。
『ずっとお城で』は、メリキャットの無邪気さ、お姉さんの潔癖さなどが次第に不穏な雰囲気を生み出してゆくのだけれど、一番怖かったのは村人たちの理由がよくわからない悪意。
『くじ』の短編はあちこちに人間の悪意が、時にあからさまに、時に目に見えない形で(このほうが怖い)ただよっていて終始ザワザワとした気分になります。
表題作『くじ』が発表されたのが1948年とのことですが、対象を決めたらいっせいになぶり殺しにかかるあたり、今見るとSNSいじめのような残酷さ。この頃からずっと人間は変わらないということでしょうか。
原題が『THE LOTTERY OR, THE ADVENTURES OF JAMES HARRIS』とあるように22篇の短編のあちこちにジェームズ・ハリスという謎の男性が登場します。
訳者の深町さんは彼を「悪魔の化身」としていますが、人は誰しもジェームズ・ハリスであり、彼がつけいる心の隙をもっているような気もします。

2022/10/06

『邪悪の家』

邪悪の家(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

『邪悪の家』
アガサ・クリスティー
真崎義博 訳
ハヤカワ文庫

秋はミステリー!な気がするのでポアロシリーズ6番目。
『邪悪の家』は前に旧訳版を読んでいますが、犯人覚えてないので問題なし。
アガサ・クリスティーの小説にありがちですが、ラストになって犯人はAさん!と思ったら黒幕はBさん!じゃなくて実はCさんでした!みたいな怒涛の展開をするので、もう犯人誰でもいいやみたいな感じなんですよね。
今回も犯人より、表面的には仲のいい女友達が内心、相手をよく思っていなかったり、恋人ができたことを妬んでいたりする感じがリアルに怖かったです。
セント・ルーのマジェスティック・ホテルが実在するのかどうか知りませんが、海辺のリゾート地で休日を過ごしたり、ホテルにランチやお茶をしにくるという生活がよいです。