2022/10/06

『邪悪の家』

邪悪の家(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

『邪悪の家』
アガサ・クリスティー
真崎義博 訳
ハヤカワ文庫

秋はミステリー!な気がするのでポアロシリーズ6番目。
『邪悪の家』は前に旧訳版を読んでいますが、犯人覚えてないので問題なし。
アガサ・クリスティーの小説にありがちですが、ラストになって犯人はAさん!と思ったら黒幕はBさん!じゃなくて実はCさんでした!みたいな怒涛の展開をするので、もう犯人誰でもいいやみたいな感じなんですよね。
今回も犯人より、表面的には仲のいい女友達が内心、相手をよく思っていなかったり、恋人ができたことを妬んでいたりする感じがリアルに怖かったです。
セント・ルーのマジェスティック・ホテルが実在するのかどうか知りませんが、海辺のリゾート地で休日を過ごしたり、ホテルにランチやお茶をしにくるという生活がよいです。

以下、引用。

11
私たちはマジェスティック・ホテルのテラスにいた。そこはセント・ルーでいちばん大きなホテルで、海が一望できる岬に建っている。眼下に広がるホテルの庭にはヤシの木が点々と植えられ、海はうっとりするような深いブルー、空は晴れ渡り、太陽はいかにも八月らしい一途ともいえる輝きを見せている(イギリスではめったにないことだが)。

26
「それが、私には判断がつかないんだ。最近、若いというだけで美人に見えてしまうんだよ。」

36
「ホテルに泊まる客というのはヒツジの群れみたいなものだからね。みんな海の見えるテラスに座りたがるものなんだ」

41
「イギリスでいちばん高い料金でいちばんまずい料理を出すマジェスティック・ホテルにお泊りなんですから」

60
「彼はあなたと結婚したがっている──ちがいますか?」
「ときどきそういうことを口にします。夜中や、ポートワインを二杯飲んだりすると」

100
ポアロはロールパンとコーヒーだけという大陸風の朝食にこだわっていた。
そんなわけで、ポアロはベッドでコーヒーとロールパン、私はベーコンとタマゴとマーマレードという伝統的なイギリス人の朝食で一日がはじまるのだ。

154
犯罪の動機としてはもうひとつ──嫉妬がある。私が情熱と嫉妬を区別するのにはわけがあるんだよ。嫉妬は、必ずしも性的な情動を伴うものではないからなんだ。妬み──所有への妬み──優越への妬み、だな。

173
ポアロは優しく彼に微笑みかけた。いつも目にしていることだが、ポアロは恋する者にはじつに優しい。

192
「世の中の美人が殺人犯になるということ自体、信じられないというのかい? これに関してはね、陪審員ともめることがよくあるんだ。」

218
「私はこうして生きているんだし。遺言書って、死んでからが大事なんじゃないんですか?」

238
「一八九三年に、ベルギーでとんでもない失敗をやらかしたんだ。
例のチョコレートの箱の事件だよ」

255
「大金持ちというのはですね、ムッシュ・ポアロ、風変わりであっても許されるのです。むしろ、それを期待されていると言ってもいい」

259
「何年ぶりかな、ムッシュ・ポアロ! 田舎でカボチャでも作っていると思ったが」
「ああ、私も作ろうとしたさ、ジャップ。だが、カボチャを作っていたって、殺人事件が追いかけてくるんだよ」

277
「まるで、エドガー・ウォレスの推理小説みたいじゃありませんか?」

359
「それに脳細胞の色が灰色だとわかった」
「細胞に色は無いのでは?」

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