『アルバイトの誕生 学生と労働の社会史』
岩田弘三
平凡社新書
今年ラストがこれでいいのかという感じですが、タイミング的にこれが読了しました。
戦前は苦学生のための「内職」と呼ばれたアルバイトが、学費や生活費のためではなく小遣い稼ぎのためのものになり、日常化していく変遷をデータから追う。
社会学者の書いたものなので、学生の経済状況や収入額、アルバイト時間、支出の内訳などデータを丁寧に追っているところは感心するものの、それだけでは見えてこない学生の本音や問題点への突っ込みは薄い。
私はデータでいうと、アルバイト収入額のピークとなる1992年あたりにまさに学生アルバイトだったわけであるのだが(学生支出における娯楽嗜好費もここらへんがピーク)、それはここで書かれているように遊びやファッションの出費のためだけではなかった。
当時友達と言っていたのは「学校、サークル、それとは別の場所としてのバイトがあって、それぞれが三角形を描くようになるといいね」ということだったと思う。経済的な理由というより、今でいうサードプレイス?ちょっと意味は違うけど。
最後のほうで出てくる「ブラックバイト」とか、バイトに正社員並みの責任を負わせる企業とか、モラトリアムとしてのアルバイトとかあたりがおもしろいポイントだと思うので、ここらへんもっと現場からの検証が欲しかったところ。
企業による「感情管理」の話が気になるけど、いつから「客に嫌な思いをさせられても笑顔で礼儀正しくすること」が職務として求められるようになったのかなあ。それって本当に仕事として必要なのかなとちょっと思ったり。
「上から目線」と言われているけど、「店員に対する敬意を忘れない」ためだけでも学生時代に接客バイトはやっておいたほうがよいと思う。