2021/10/10

『ずっとお城で暮らしてる』

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

『ずっとお城で暮らしてる』
シャーリィ・ジャクスン
市田泉 訳
創元推理文庫

タイトルが素敵すぎて気になっていた一冊。
原題はWe have always lived in the castle。
ファンタジーなのかミステリーなのかホラーなのかも知らず読み始めましたが、「恐怖小説」というジャンル。ホラーと呼ぶよりしっくりする。
「村の人々は、ずっとあたしたちを憎んでいた。」という一文の破壊力。
なぜ村の人々がそこまでブラックウッド家を憎んでいるのか、6年前に本当は何が起こったのか。語り手であるメアリ・キャサリン(メリキャットという呼び名がめっちゃかわいい)は18歳にしては言動が幼すぎるのだが彼女の中では6年前から時間が止まっているのだろう。そもそもメリキャットは本当に存在するのか?コンスタンス姉さんは?
静かに崩壊していく感じに終始ゾクゾクして読みました。桜庭一樹の解説ではメリキャットの異常性が指摘されていてそれが普通の読み方だと思うけど、私はむしろ村の人々の悪意が怖かった。いちばん異常なのはコンスタンス姉さんではという指摘ももっとも。


以下、引用。
ブラックウッド家は昔からこの屋敷で暮らし、自分たちの財産をきちんと管理してきた。新しいブラックウッドの花嫁が越してくると、すぐさま花嫁道具を置く場所が用意された。だからあたしたちの屋敷はブラックウッド家の財産の層でできていて、そのおかげで重みを増し、世の中に堂々と向き合っていられるのだ。
村の人々は、ずっとあたしたちを憎んでいた。
あたしは乳歯が抜けるたびに、一本ずつ土に埋めていった。いつかその歯はドラゴンになるかもしれない。うちの土地はあたしが埋めた宝物でいっぱいだ。
「今日は翼のあるウマがやってくるから、月までつれていってあげる。月の上で薔薇の花びらを食べましょう」
「四十四章をほんとうに始めようと思うんだ」おじさんは手を打ち合わせた。「少し大げさな表現で始めて、まったくの嘘へと続けていこうと思う。コンスタンス?」
「なんですか、おじさん」
「妻が美しかったと書くつもりだよ」
小川までさんぽするのはどうだろう。でも火曜日の朝に行ってみたことはないから、小川がそこにあるかどうかもわからない。

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