2022/05/17

『ロリータ』

ロリータ (新潮文庫)

『ロリータ』
ウラジーミル・ナボコフ
訳 若島正
新潮文庫

『テヘランでロリータを読む』『わたしが先生の「ロリータ」だったころ』を読みたいと思ったのですが、そもそも『ロリータ』を読んだことないじゃん、ということで読んでみました。
前半は主人公ハンバートが語る幼女の魅力とか、ロリータに警戒されることなく、いかに彼女に近づくかといった話が延々と続き、ただもう気持ち悪い。
彼のいうところの「ニンフェット」とは、9歳から14歳で、2倍以上の年上の相手に対してのみ、悪魔的な魅力を発揮する少女のこと。
出会ったとき、ロリータは12歳、ハンバートは37歳。この年齢差で恋愛が成り立つとはやはりありえず、ロリータが早熟な少女だとしても二人の関係は児童虐待に思えます。
『テヘランでロリータを読む』では、イスラム世界では幼い少女が年上の男性に嫁がされる現状が指摘されていて、ハッとしました。
『ロリータ』自体はハンバートの視点で書かれているので、奔放な少女に振り回されている哀れな中年男性の話に見えますが、『テヘランで〜』の視点から読むと、子供時代を奪われたロリータの悲鳴のようなものも感じられます。
プルースト、ポー、ジェイムズ・ジョイスからの引用や言葉遊びを多用した文章は非常に読みにくく(そもそも元ネタを知らないのでひねってあってもおもしろくもなんともない)、訳者の若島さんはナボコフの研究者でもあるようですが、詳細な訳注の「ハンバートはなぜそうしたのか、考えてみること」といった上から目線にちょっと引きます。
後半、ハンバートが苦しみだしてからやっと話がおもしろくなってくるんですが、冒頭から伏線がめちゃくちゃ引かれているので、残り3分の1くらいになってから前半をちょこちょこ読み直しました。スラップスティックな終盤は戸惑うところですが、ここでのハンバートの後悔が一番の読みどころ。
読了してみると全体的には読み応えのある作品だったと思うのですが、「ロリータ」という言葉自体が作品から離れて一人歩きしており、日本における「ロリコン」とか「ロリータ・ファッション」などはまた別に考えてみたいところです。

--------------------------------------------------
以下、引用。
秋が空気の中に鳴り響いていた。
「ほら、死ぬのがすごく怖いのは、完全に一人っきりになってしまうからよ」
「人は小説を読むことはできない。ただ再読することができるだけだ」という、『ヨーロッパ文学講義』でのナボコフ自身の名言どおりに、『ロリータ』も読み直したときに初めて気がつくような仕掛けにあふれている。

0 件のコメント:

コメントを投稿