『はじめてのアメリカ音楽史』
ジェームス・M・バーダマン、里中哲彦
ちくま新書
ハンク・ウィリアムズトリュビュートライブの予習としてカントリー・ミュージックの勉強に読んでみました。
カントリーに特化した書籍が見つからなかったのでざっくりとアメリカ音楽史。
そもそもカントリー・ミュージックって何? ウェスタン、フォーク・ソングとどう違うの? あたりの知識のなさから読み始めているので、アメリカの歴史、黒人音楽を白人が取り入れていった過程、宗教音楽としてのゴスペル、労働歌から生まれていったブルーズなど、いろいろ興味深かったです。
アーティストと曲名、固有名詞のオンパレードなので、名前だけ聞いたことがあっても音楽と結びつかないところも多かったです。ここらへんは実際に聴いてみないとわかんないなぁ。
著者のバーダマンさんがメンフィス出身なのもあって南部に話偏りすぎじゃないかと思うところもありました。
ハンク・ウィリアムズについては
「彼はさまざまな意味で、戦後まもないころの南部を体現しています。アラバマの田舎臭さを全身にただよわせ、場末の酒場に入り浸っている雰囲気をもっていました。」
「土曜の夜は酔いつぶれるまで飲んで、日曜の朝になると教会で魂の救済を願うような、そうした矛盾した存在の象徴のように見えます。」
と書かれていて映画『アイ・ソー・ザ・ライト』とあわせて納得しました。
『アイ・ソー・ザ・ライト』という曲自体、神をたたえるゴスペルの系譜になるのかな。
参考になりそうな映画もたくさん紹介されていたのでここらへんもゆっくり見ていきたい。
以下、引用。
41
さらに興味をひくのは、黒人たちが、なんとブラックフェイスの化粧をしていることです。あくまでそれは芝居のキャラクターであり、現実の自分たちには重ねていないということがわかります。このことは、ペルソナ(仮面)をつければ真実を語ることができる、という芸術の本質に迫っているともいえます。
68
ゴスペル(gospel)というのは「福音」を意味する言葉です。語源の"good spell"はgood news(よい知らせ)のこと。「吉報」を意味するエヴァンジャル(evangel)と同じです。つまり、ゴスペルというのは、イエスの教えをよいものとして称える音楽のことなのです。
72
ブルーズとゴスペルはコインの裏表ですね。マヘリア・ジャクスンがいったように、絶望を歌うのがブルーズで、希望を歌うのがゴスペルだった。
84
彼(ジェイムズ・クリーヴランド)には天与の資質があり、「電話帳を歌うこともできる」ともいわれました。
100
ブルーズの歌詞を読むと、政治的なメッセージを発したり、歴史的な事件についてコメントすることはまずありません。ひたすら個人的な苦悩を感情的に述べるのがその特徴です。
官能的な歌詞もまた多い。性愛関係がうまくいっていないとか、エロティックなことをしたいとかね。性的能力を誇る歌詞も多い。
ブルーズマンたちが女のことを歌った理由は、B.B.キングの言葉にすべてがいい尽くされています。「南部の黒人の男が、女にふられたら、すべてを失う。ほかに何も持っていいのだから」。
179
彼(レイ・チャールズ)は土曜の夜の罪深い人と日曜の朝の教会参列者が同じ人間であるということも知っていた。
195
ジェイムズ・ブラウン
つねづね「学校を卒業せよ。資格を持つんだ。準備をせよ。教育こそが真のブラック・パワーだ」と若者を激励した。
206
80年代から90年代のラップの歌詞を分析すると、「自分を自慢する」「他人をディス(軽蔑)ったり、ビーフ(罵倒)したりする」「政治的に文句をいう」に大別できる。自分を誇り、他人を〝攻撃〟する。内省がなく自慢がある。謙虚さがなく傲慢がある。
暴力と金銭を礼賛して女性を蔑視する、との印象が強い。
217
カントリーは、イギリスのバラッド(民衆の物語詩)にそのルーツを求めることができます。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド移民が本国からもってきた民族音楽から発展してきました。
218
イギリスから移住してきた人々は、アパラチア山脈の周辺で祖国の民謡を歌い継いできました。ブルーズのルーツが黒人文化にあったように、カントリーの素地は南部の白人文化にあるのです。
221
カントリー&ウェスタンと呼ばれることもありました。その名が示すように、この音楽ジャンルには二つの流れが融合している。
アパラチア山脈地方の農夫やきこりのあいだで歌われていたイギリス民謡から派生した音楽で、ブルーズの影響を受けているもの。
カーター・ファミリー、ジミー・ロジャース
テキサスを中心に発展したウェスタン・スウィングとカウボーイ音楽。西部劇映画の主題歌や挿入歌として広まった。
ジーン・オートリー、ロイ・ロジャース
222
もともとカントリーは、レコードよりもむしろラジオで普及しました。なかでも有名なのがナッシュヴィル(テネシー州)の「グランド・オウル・オプリ」(Grand Ole Opry)。グランド・オールド・オペラをもじったその名称には、ヨーロッパの伝統音楽を揶揄する気持ちがいくぶん込められています。
フィドルというのはヴァイオリンのことだけど、一般にクラッシックの世界で使われている楽器がヴァイオリンで、カントリーやフォーク、つまりクラシック以外のポピュラー音楽や民族音楽で用いられている楽器がフィドルと呼ばれている。
ある人がこういっています。「真面目な顔して演奏するのがヴァイオリンで、酔っぱらって演奏してもいっこうにかまわないのがフィドルだ」と。
白人がもたらしたダンス音楽はたいていフィドルによって演奏されました。フィドルがあればカントリー・ミュージックになり、カントリー・ミュージックにはまたダンスがつきものだった。
228
ホンキー・トンクというのは安酒場のこと。
ホンキー・トンク・ミュージックは、テキサスのホンキー・トンクから誕生したテンポの速いカントリーを指します。
その代表がハンク・ウィリアムズです。
彼はさまざまな意味で、戦後まもないころの南部を体現しています。アラバマの田舎臭さを全身にただよわせ、場末の酒場に入り浸っている雰囲気をもっていました。
土曜の夜は酔いつぶれるまで飲んで、日曜の朝になると教会で魂の救済を願うような、そうした矛盾した存在の象徴のように見えます。
230
70年代になると、徐々にまた人気が復活しはじめた。都市生活者が抱える「郷愁」「悲哀」「孤独」といった感情をうまくすくいあげたのです。
目まぐるしい都市生活から離れて、しばし自然に親しみ、時間とのんびり戯れたいという願望をくすぐったのでしょう。そもそもわたしたちが「カントリー」と呼んでいる音楽は、直接カントリー(田舎)から出てきたのではありません。都市のメディアの影響を受けて生まれたものなのです。その意味では、現代のカントリーは都市に暮らす人々のための郷愁の音楽だともいえます。
カントリーは、故郷の山河を失った人々の喪失感によって支えられているということですね。
現代のカントリーは、都会という荒野で人気のある音楽と理解したほうがよいでしょう。
235
フォーク・ソングは、アメリカの社会情勢を反映している。社会の悪に抗議するような歌はカントリーに育っていないけど、フォークは社会にメッセージを送ったり、プロテスト(抵抗)することを前面に押しだしている。
236
アメリカ文化の底流には、近代文明を否定して自然に帰ろうとする動きがつねにあります。それが50年代にはビートニク(物質文明を嫌悪して気ままにふるまう若者)、60年代にはヒッピー(既存の制度や慣習を拒否して脱社会的行動をとる若者)という姿になってあらわれました。一部のフォーク・ソングにもそれが感じられますね。
237
カントリー・ミュージックには「素朴」「郷愁」「楽天性」が漂っていたけど、戦後のフォーク・ミュージックには「反抗」「左翼」「悲観性」といったニュアンスが際立っている。
256
語源的なことをいうと「ロック」も「ロール」も黒人のスラングで、セックスを指す隠語でした。
はっきりいってしまえば、〝ファック〟の婉曲表現です。
『ジャズ・シンガー』
『天使にラヴ・ソングを』
『クロスロード』
『カンザス・シティ』
『ジャズ・ミー・ブルース』
『永遠のモータウン』
『約束の地、メンフィス』
『ジェームズ・ブラウン 最高の魂を持つ男』
『歌追い人』
『オー・ブラザー!』
『歌え!ロレッタ愛のために』
『暴力教室』
『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』
『アメリカン・グラフィティ』
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