2023/12/05

『アンの青春』

アンの青春 (文春文庫)

『アンの青春』
モンゴメリ
松本侑子 訳 
文春文庫

松本侑子新訳版のアンシリーズ第2巻。
原題は『Anne of Avonlea』。
第2巻『アンの青春』と第3巻『アンの愛情』の邦題は逆の方があっていたんじゃないかと昔から思っていて、順番が混乱するんですが、こちらはアンがアヴォンリーで新米教師として過ごす2年間の物語。
自分メモ的に整理しておくと
アンがグリーン・ゲイブルズに来たのが11歳のとき。
アヴォンリーの学校を経て15歳のときにシャーロットタウンのクイーン学院に進学。
クイーン学院は教師になるための師範学校で、通常は2年かけて教員免許をとるところ、アンとギルバートは成績優秀のため1年コースで卒業。
マシューの死去にともない大学進学をあきらめ、16歳でアヴォンリーの教師になる。(←イマココ)
さらに自分メモ的にそれぞれの学校の先生
・アヴォンリー
アン→ジェーン・アンドリューズ
・ホワイト・サンズ
ギルバート・ブライス
・カーモディ
プリシラ・グラント→ルビー・ギリス
ホワイト・サンズやカーモディがアヴォンリーからどれくらい離れているのか不明ですが、週末や夏休みには帰省できるけど毎日通うのは難しい距離のようです。
『大草原の小さな家』のローラも15歳で教師になってます。アンが教師になったとき、アンが教える上級生たちはちょっと前まで一緒に勉強していた子供たちなんですよね。モンゴメリ自身は19歳で教師になっていますがみんな若い。
新しい隣人ハリソンさんのスキャンダル、アンクル・エイブが預言した大嵐など、村岡花子版の外伝短編集『アンの友達』、『アンをめぐる人々』のようなアヴォンリー村物語的な側面もあります。
そして村岡花子版でも何度も読んでますがミス・ラヴェンダーがやっぱり素敵だな。30代くらいのイメージだったけど45歳なのか。
村岡花子版では「山彦荘」、松本侑子版では「こだま荘」の石の家の名前が「エコー・ロッジ」だと初めて知る。
基本的なストーリーは村岡花子版でおなじみなんですが、花の名前とか細かい自然描写が松本侑子版の方がわかりやすく頭の中で風景を再現しやすい気がします。
へスター・グレイの庭は黄色と白の水仙に埋もれてるんだとか。
子供の頃はラヴェンダーの花や香りが今ほど具体的にイメージできてなかったというのもあるかもしれません。
あとリンドおばさんとマリラの名言多し。
「マリラ、失敗したらどうしよう!」
「たった一日で、大失敗なんかできないよ」
「マリラ、私、頭が変なように見える?」
「いいや、いつもほどじゃないよ」
今回も解説が100ページほどあります。細かい引用なんかはそこまでチェックしなくてもと思うものもありますが、当時は暗誦が普通に行なわれており、欧米小説では聖書やシェイクスピア、古典の引用が一般的だったという解説は納得。
ポール・アーヴィング、双子のデイヴィとドーラ、アンソニー・パイ、いずれも幼くして親を亡くしている子供たちで、モンゴメリ自身が反映されているのではという指摘もなるほどと思いました。

以下、引用。

20
「夜中に寝室にあがって、ドアに鍵をかけて、日よけもおろして、それからくしゃみをしても、リンドのおばさんなら、次の日、風邪はどんな具合かねってきくわよ!」

25
アンの声がうわずり、灰色の瞳が、宵の明星のようにきらきらと輝いたので、リンド夫人は、またわからなくなった。アン・シャーリーが本当は美人かそうでないか、いつになったら納得のいく答えが出るのだろうか。

52
《すみれの谷》を通り、《ウィローミア》をすぎると、もみの下で、夕闇と西日の陽光が口づけをするように溶けあっていた。

55
「マリラ、失敗したらどうしよう!」
「たった一日で、大失敗なんかできないよ。まだ先は長いじゃないか」

62
先日ハリソン氏が、シャーロットタウンの店で、くどいほど着飾った女性を見かけたと語り、「そいつはまるで、最新流行の服の女と悪夢が正面衝突したみたいだった」と評していたのだ。

112
「大事なのは、ジョシュアという男の仕事ぶりの良し悪しだ。腕がよけりゃ、名前はパイだろうがプリンだろうがかまわんさ」

163
「土曜の朝は早くうちに来て、お弁当の支度を手伝ってね。できるだけ優雅なランチを作るの……春のお出かけにふさわしいものよ、いいこと……小さなゼリー・タルトに、指形クッキー(レディ・フィンガー)、ピンクと黄色の糖衣がけ(アイシング)をしたドロップ・クッキー、きんぽうげのケーキ。サンドウィッチも用意しなくちゃね、これはあまり詩的じゃないけど」

165
「もしキスが目に見えたら、すみれの花のようでしょうね」プリシラが言った。

170
空気は透明にきらめく金色のワインのようだった。

178
「あの人はのろまで急に止まることもできやしないくらいだが、手伝いがいないよりゃ、ましだからね。」

「あの男も十年ばかし死んでいたようなもんだが、十年先も同じだろうね。ああした男は死んで自分に始末をつけることもできやしない……何一つしっかりとやり抜くことができないんだから。」

217
「にわとりの羽根をむしるのは嫌いだけど」アンはマリラに語った。「手先がしているだけだもの、気持ちは別のところにあるから助かるわ。手はにわとりをむしっても、心は天の川(ミルキーウェイ)をさまよっているのよ」
「どうりで、いつもより羽根が床に散らかるこった」マリラが注意した。

229
「大丈夫、これは買ったものよ。先祖代々受けついだものじゃないわ」

249
アンがマリラに語ったことがあった。「結局、一番幸せで心楽しい暮らしとは、華やかなこと、驚くようなこと、胸ときめくようなことが起きる日々ではなく、さりげない小さな喜びをもたらす毎日が、今日、明日としずかに続いていくことなのね、まるで真珠が一つ、またひとつと、糸からすべり出ていくように」

279
「だから何かしないと気がすまないときは、男の子を一発殴ればいいんだよ、心を傷つけるよりましだもん。」

282
「まるで一年という存在が、巨大な大聖堂のなかでステンドグラスからそそぐ柔らかな光を浴びながら、ひざまずいてお祈りしているみたい」

290
「もっとも、わたくしのような年で想像ごっこをするなんて、馬鹿げているかもしれませんが、馬鹿なことをしたいときにできないなんて、いい年をした女が一人で暮らす意味がありませんわ、迷惑をおかけするわけじゃないんですもの。」

295
「そして母を一目見るなり、恋におちたんです。その晩、客用寝室に泊まった父は、ラヴェンダーがほのかに香るシーツに、一晩中まんじりともせずに横たわり、母を想ったんですって。それからというもの、父はいつもラヴェンダーの香りを愛していました……そんな思い出があって、娘の名前にしたんですね。」

297
「でも、たとえケレンハパッチという名前でも、きっとアンを好きになったわ。名前って、持ち主の人がら次第で、美しくもなれば醜くもなるのね。」

「美しい生き方が、その人の名前を美しいものに変えるのね、最初はきれいな名前に思えなくても……やがてまわりの人たちは、その名を聞くだけで、優しく心地よい気持ちになって、名前がもともとすてきじゃなかったことなんて、考えもしなくなるんだわ。」

300
「たしかにミス・ラヴェンダーは人とは違うわ。どう違うか、うまく言えないけど、おそらく年をとらないタイプなのね」
「同年輩がみんな年をとるなら、一緒に年をとったほうがいいと思うがね」

301
「後になってみると、少しも大したことじゃなかったのかもしれないわ。人生は、小さなことのほうが、大きなことよりも厄介を引きおこすのよ」

302
「トーマス・リンドという男は、気あいを入れたことなんか一度もないんだからね。結婚するまでは母親に牛耳られ、結婚後は女房の言いなりだ。よくもレイチェルの許しもなしに病気になったもんだよ。」

304
「猫に尻尾が二本いらないように、ドーラに新しい帽子はいらなかったのに、アンは買ってくれてね。」

334
「マリラ」アンは大まじめで言ったが、その目はおどっていた。「私、頭が変なように見える?」
「いいや、いつもほどじゃないよ」マリラは皮肉を言っているつもりはなかった。

337
デイヴィにとって、プラムジャムに癒せない悲しみなどないのだった。

387
「結婚するのに、ラテン語だのギリシア語だのが何の役に立つんでしょう。大学で男の扱い方を教えてくれるというのなら、行く意味もあるんでしょうが」

0 件のコメント:

コメントを投稿