2022/04/17

『占いをまとう少女たち』

占いをまとう少女たち 雑誌「マイバースデイ」とスピリチュアリティ (青弓社ライブラリー)

『占いをまとう少女たち
雑誌「マイバースデイ」とスピリチュアリティ』
橋迫瑞穂
青弓社ライブラリー

1980年代に少女たちの間に広まった「占い」と「おまじない」ブームを牽引した雑誌『マイバースデイ』を読み解き、80年代から2000年代の女性と占いの関係性の変遷を追う。

『魔女狩りの地を訪ねて』を読んで、魔女と占い、おまじないって切り離せないよねと思ったので、こちらを読んでみました。

『マイバースデイ』は1979年に創刊された占い専門雑誌。私は区別ついてなかったけど、『マイバースデイ』が実業之日本社、『Lemon』が学習研究社の刊行。2006年に休刊。

『マイバースデイ』だったか『Lemon』だったか星座別に毎日の占いが載っていて、透明な下敷き(あったよね!)にページを切り抜いていれている子がいたり、自分の星座ではないページを友達がくれたりしました。まあ、毎日の占いなんてそんなに熱心に見続けられるものでもないんですが。

この本のなかで紹介されているものだと「金星が輝く晩にワインを供えて呪文を唱え、洗面器と鏡を用意してそのなかを覗き込む」のように「おまじない」の手順が結構複雑で(金星が輝く晩っていつ?)、そんな面倒なことやってられるかという感じで私ははまらなかったなあ。

それでも、やはりこの本に出てくる「ティーカップにジャムを入れて月の女神に呼びかける」とか「小さな鈴をハンカチに入れて持って歩く」といったおまじないになぜだか見覚えがあるので、このページを友達にもらったか、ポピュラーなおまじないだったんでしょうか。
(比較的簡単なおまじないだから、やる気があったのかもしれない。)

「白魔女」という理想像に向けて、「魔女っこ」として読者が努力する、そのために「おまじない」があったというのはなかなかおもしろい見立て。

また、1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件により「宗教ブーム」に対する忌避感が生まれ、「おまじない」が魅力を失っていき、2000年になってスピリチュアル・ブームが起こり、成人女性が主な担い手であること、最近では妊娠、出産に結びついていること、などおもしろい指摘も多い。
(『マイバースデイ』の読者だった少女たちが大人になってスピリチュアルブームの担い手になった訳じゃないような気もしますよね。また別の世代な気がする。)

しかし、社会学的な文体もあって、分析は丁寧なのに、結論や考察がややいきなりで読みにくいというか、うまく飲み込めないところも多かったです。

ポプリとかフェルトの人形の手作りとか、80年代少女文化については、懐かしいというより、なんだったんだあれはという気持ちが強く、社会学者が考察して何か答えが出るのかどうかわかりませんが、ほかにもいろいろ本が出ているようなので読んでみたいです。


2022/03/19

『悪童日記』

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

『悪童日記』
アゴタ・クリストフ
堀茂樹 訳
ハヤカワepi文庫

ウクライナ情勢に関連して東欧文学でも読んでみようと手に取ってみました。フランス語で書かれているけど、作者アゴタ・クリストフはハンガリー出身。

作品の歴史的背景については訳者による詳しい解説があるけれど、基本的にどこの国のいつの物語なのかは書かれていない。

おもしろいとは聞いていましたが、噂にたがわぬおもしろさ。双子の少年たちの倫理は独特で、窃盗、恐喝、殺人もいとわず、残酷なまでに冷静に人を裁く一方で、兎っ子や魔女とよばれる祖母に対してはとても親切。誰が正しくて誰が敵なのかもよくわからぬ状況の中、彼らは自分たちのルールで生きていく。

感情を排した書き方はクールというより、暗いはずの世界をユーモラスに描いていて、いろいろ恐ろしいことが起こっているのに、物語は終始明るい。

双子として書かれているけど、彼らは本当に2人なのか、残酷な天使のような少年たち。続編も気になります。


『EPICソニーとその時代』

EPICソニーとその時代 (集英社新書)

『EPICソニーとその時代』
スージー鈴木
集英社新書

『アンジェリーナ』、『そして僕は途方に暮れる』、『My Revolution』、BARBEE BOYS、ドリームズ・カム・トルゥーなど、80年代のキラキッラな音楽を生み出してきたEPICソニー。
名曲の分析、レーベルの歴史、プロデューサー小坂洋二、佐野元春インタビューを収録。

冒頭でそれぞれの曲を最初に聴いたときの思い出が書かれているんですが、これよくわかる。最初に聴いたときを覚えているくらいEPICソニーの曲というのは新鮮で衝撃的でした。

私の場合、『そして僕は途方に暮れる』は校内放送。クラスで一番かわいい女の子を捕まえて「これ誰の曲?」とたずねました。特別仲が良かったわけでもないのになぜその子に聞いたのか。彼女なら知ってるはずとなぜか思った。

バービーボーイズは陸上部の後輩でマネージャーの順子ちゃんが「先輩こういうの好きだと思う」ってテープをくれました。最初に聞いたのは『負けるもんか』。

ドリカムは渋地下で短期バイトをしていたときにラジカセから繰り返し流れていた『うれしはずかし朝帰り』。この時もバイト先のかわいい女の子に「誰の曲?」と聞きました。あとからわかったけど彼女がドリカム好きなんでほかのバイトくんが彼女のためにかけていたらしい。

「EPICソニーのアーティストは美男美女」というのはわりと真髄をとらえているのではないかと思います。
私にとってEPICソニーとは「おしゃれな子が聴いているかっこいい音楽」で、そのキラキラ感にあこがれた。

90年代になってキラキラ感がごく普通のものになり、J-POPになっていく過程で失われていってしまうのですが、今聴いてもやっぱり眩しいなあ。

佐野元春がインタビューで素で「キッズたちが」とか言ってるのかっこよすぎ。日常会話でキッズ言って様になるのは彼くらいでしょう。


2022/03/09

『青い眼がほしい』

青い眼がほしい (ハヤカワepi文庫)

『青い眼がほしい』
トニ・モリスン
大社淑子 訳
ハヤカワepi文庫

「秘密にしていたけれど、一九四一年の秋、マリーゴールドはぜんぜん咲かなかった。あのとき、わたしたちは、マリーゴールドが育たないのはピコーラが父親の赤ん坊を宿していたからだと考えていた。」

最初の章のこの冒頭からもう心を鷲づかみ。トニ・モリスンの文章は歌うような美しさがあります。

青い眼がほしいと祈る黒人の少女ピコーラ。黒い肌に青い眼、それが美しいと思ってしまうピコーラ。彼女がかわいいと思うのはシャーリー・テンプルのような少女。

たいして語り手であるクローディアは、大人たちがくれた白い肌、金髪で青い眼のベビードールをばらばらにこわす。
(黒人の女の子に金髪で青い眼の人形をあげるってよく考えると奇妙なことなんですが、昔は日本の女の子もこういう人形に憧れたんですよね。リカちゃんはフランス人と日本人のハーフだし、ジェニーは元がバービーだし。)

「難解な作品」「よくわからなかった」という感想がいくつかあった。たしかに構成は少し複雑ですが、基本的にはピコーラを中心に、彼女の父親、母親、彼女をいじめた黒人の少年たち、白人の少女たち、それぞれの視点が交錯し、彼女を追い詰めたものを描いている。

人種差別を背景にした残酷なストーリーなんですが、読み終わって残るのはほのかな光のような美しさ。
それはトニ・モリスンがあとがきで解説しているような「正午を過ぎたばかりの午後の通りの静けさ」であり、「たんに目に見えるものではなく、人が〝美しくする〟ことのできるもの」、ピコーラにはわからなった「自分が持っている美しさ」のような気がします。

2022/03/03

『魔女狩りの地を訪ねて』

魔女狩りの地を訪ねて: あるフェミニストのダークツーリズム

『魔女狩りの地を訪ねて: あるフェミニストのダークツーリズム』
クリステン・J・ソレ―
松田和也 訳
青土社

『魔女街道の旅』が物足りなかったので、「魔女狩りの地を訪ねるトラベラーズガイド」という似たような構成の本書を読んでみました。
(原題は『Witch Hunt A Traveler’s Guide to the Power and Presecution of the Witch』)

イタリア・フィレンツェから始まり、イタリア・シエナ、ジェノヴァ、ヴァティカン、フランス・ルーアン、パリ、ドイツ、アイルランド、イングランド、スコットランド、アメリカ・ヴァージニア州、マサチューセッツ州セイラム、ニューヨークと魔女狩りの地を訪ねる。

魔女狩りの記念碑が立っていたり、ガイドツアーのテーマになっていたり、拷問具が展示されていたり、魔女術の土産物屋があったり、ホテルになっていたり、どこも観光地化してるんですね。

悪文というか、著者の独特の書き方(観光地を歩いていると、その地で犠牲になった女性の霊が現われてしゃべりだすとか、ときおり挟みこまれる皮肉めいた話し言葉とか)と、なんでこんな漢字を当てているの?という日本語訳もあり、非常に読みにくいんですが、「この場所を訪れて私はこんなことを感じた」という雰囲気は伝わってきます。

なんでもかんでもジェンダーにつなげてしまうのはどうかと思いますが、フェミニストである著者の視点から魔女狩りの歴史が語られているのもおもしろいです。

次々と夫を変えた女性が性愛魔術を使ったとして迫害されたとか、魔女とされた娼婦たちがいたこととか、エロティックで淫らな魔女の絵画に反映された男性たちの欲望とか、魔女とセクシャルは無縁ではないのですね。

特に「老婆=魔女」という、今まで読んだ魔女狩りの本では朧げに書かれていたことが追究されているのも清々しい。

著者は否定的ですがジャンヌ・ダルクのトランスジェンダー説なんかもあったり。

いくつもの論文が引用されており(さすがに欧米だと魔女狩りって研究対象なのか)、天候悪化、宗教的対立、性的差別など、迫害の対象となった女性像が論じられているのも興味深かったです。

2022/02/24

『君さえいれば/金枝玉葉』


懐かしくて見てしまった。

レスリー・チャン、アニタ・ユン、カリーナ・ラウ出演のラブ・コメディ。監督はピーター・チャン。

豪華メンバーなんだけど、残念ながらラブコメ部分がちっともおもしろくないんだな。見始めてから、ああ、そういえばそうだったと。

ゲイネタで笑いを取ろうとするのは当時も無理があったんだけど今見るともう差別ではないかと。当時はまだ公表してなかったと思うけど、同性のパートナーがいたレスリー的にはつらかったんではなかろうか。

それでもアニタ・ユンがレスリーに恋に落ちる瞬間とか、カリーナ・ラウの「私を射止めてね」とか、「走っていけよ」とか、いい場面もちょこちょこあります。

当時大好きだったアニタ・ユン。
そして、レスリー・チャン。
雑誌のインタビューで「この映画のいいところは」と聞かれて、「レスリーとキスできたこと!」と無邪気に答えていたアニタを思い出しました。

2022/02/23

『ハリー・ポッター20周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ』

これが見たくてU-NEXTに登録したのに香港映画や韓国ドラマにうつつをぬかし、そろそろトライアル期間が終了してしまうのでやっと見ましたハリポタ同窓会。

内容自体はもうネット上に公開されているのでそれほど驚きはありませんが、エマがトムに恋したときの話、ダニエルがヘレナに送ったラブレター、ダンスシーンやキスシーンの苦労話、そしてルパートが「僕たちは家族だ」という場面はやっぱり感動的です。

全体的にはちょっと綺麗にまとめすぎている感もあるのと、シェーマスたちの出番が少ないのはもったいない気もします。

グリフィンドール談話室だけでなく、スリザリンとかグリンゴッツ銀行とか魔法学の教室とか、どうやって撮影しているのかと思ったら、ハリー・ポッター・スタジオ・ツアー・ロンドンのセットで撮っているみたいですね。これはたしかにちょっと行ってみたい。

『ハリー・ポッター20周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ』