『ショッピングモールの社会史』
斉藤徹
彩流社
あとがきに「一部の若手の社会学者やマニアを中心に」、「郊外の公団住宅、団地、ショッピングセンター、工業地帯の工場群など」「が再び注目されている」とありますが、ショッピングセンターが社会学者に注目されたのは、『ショッピングモールから考える』が2016年刊行なので、その頃でしょうか。
(団地や工場に注目していたのは大山顕さんのことを指しているのかと)
当時は近くにショッピングモールがなかったので他人事のように読んでましたが、角田光代『空中庭園』には「典型的郊外型ショッピング・モール」が次のように描かれています。
「ディスカバリー・センターの出現は、ダンチに住むおびただしい家族と、この町に住む多くの人間を救ったと、あたしは信じている。便利になったことはもちろんだが、もっと精神的な意味合いにおいて、だ。」
「ディスカバリー・センターは、この町のトウキョウであり、この町のディズニーランドであり、この町の飛行場であり外国であり、更生施設であり職業安定所である。」
前に『空中庭園』のこの部分を読んだときはびっくりしたんですが、今では地方におけるショッピングモールの存在の重要性、経済的、商業的な意味だけでなく、社会的な重要性をひしひしと感じるので、本書を読んでみました。
ショッピングモールはご存知のとおりアメリカで生まれた商業施設で、自動車の普及とそれにともなう住宅の郊外化によって発展します。
「フェスティバル・マーケット・プレイス」型のショッピングセンターとして有名なのが、1985年にサンディエゴのダウンタウンに開業したホートン・プラザ。
このホートン・プラザには1990年頃に行ったことがあります。カラフルな通路とあちこちにかけられたエスカレーターや階段で高低差のある各階がつながれており、今、自分が何階を歩いているのか、目的のお店になかなかたどりつけない迷路のような構成で、でもウロウロすることさえ楽しくて、特に買物をするわけでなくても毎日のように通っていました。
六本木ヒルズができたとき、アメリカのショッピングセンターのようだと思ったのですが、同じジョン・ジャーディによる建築デザインだったいうことを今回知りました。彼はほかにもキャナルシティ博多、なんばパークを手がけています。
ホートン・プラザは、まさにディズニーランド的楽しさのあるショッピングセンターだったのですが、2005年頃に再訪したときには空き店舗も多く、全体的になんだか暗い印象でした。2020年には改築のため閉鎖となっています。
日本では鉄道網を中心にステーションビル、地下街、駅前のファッションビルが登場。道路網の整備と自動車の普及により、アメリカより3、40年ほど遅れて郊外型ショッピングセンターが登場します。
アメリカにおけるショッピングセンターの歴史については詳しく書かれており非常におもしろいのですが、いちばん知りたかった2010年代以降の日本のショッピングセンターの現状についてはあまり触れられておらず。
ホートン・プラザが寂れたように、アメリカでもショッピングセンターという商業形態は変化を求められているのですが、その未来がよく見えないという感じでした。
ただ、ショッピングセンターはやはりたんなる商業施設としてのみならず、文化的価値やコミュニティを実現する場所をめざしてつくられてきたんだなと思いました。
(あと誤字が多いのが気になりました。参考文献のタイトルが間違っていたり、速水健朗さんの「ショッピングモーライゼーション」が突如として出てくるのですが、元となる本『都市と消費とディズニーの夢』についてまったく言及がないのもどうなのか。)