『実朝の歌 金槐和歌集訳注』
今関敏子
青簡舎
今関敏子
青簡舎
『鎌倉殿の13人』第39話は同性愛を描いたことが話題になりましたが、私的には恋心や失恋を伝えることのできる和歌の表現力、実朝の和歌のすばらしさをわかりやすく描いたことがうまいなと思いました。
実朝の歌でおそらく一番有名なのは百人一首に選ばれている
世の中は常にもがもな渚漕ぐ
海人の小舟の綱手かなしも
だと思いますが、あらためて聞いてみると、日常のなにげない風景を見て、こんな穏やかな日々が続いてほしいと願う、素朴でいい歌だなと思います。(鎌倉殿である実朝が庶民の日常を見ているところも良いですね)
『金槐和歌集』に収録されているのは663首。この本では現代語訳と参考となる他の和歌が紹介されていて、これもおもしろいんですが、全部ちゃんと読んでいると時間がかかってなかなか進まないのと、元の和歌だけをそのまま読んだほうが素直に理解できる感じがしたので後半は和歌部分のみを読み進めました。
和歌の歴史はほとんどわかりませんが、実朝の和歌はおそらく万葉集とかに近い、素朴で力強いものが多い気がします。
四季を歌ったもののなかには、本歌取りというか、ほとんどパクりじゃないのみたいに後鳥羽院の影響を受けているものとか、(和歌ってそういうものらしいけれど)行ったことのない京とか吉野の地名が出てくる雅な感じのものもありますが、圧倒的に後半の「雑」に分類されている歌のほうが良い。
『鎌倉殿』では失恋の歌として使われていましたが
大海の磯もとどろに寄する波
破れて砕けて裂けて散るかも
とか、後半のリズムが波音のような激しさがあって力強いですよね。
800年前に書かれた歌が今も通じるって日本語ってすごい。ここらへんの時代の和歌をもう少し読んでみたい気持ちになりました。
371
春霞龍田の山の桜花
おぼつかなきを知る人のなさ
482
七夕にあらぬ我が身のなぞもかく
年に稀なる人を待つらむ
604
世の中は常にもがもな渚漕ぐ
海人の小舟の綱手かなしも
609
かくてのみありてはかなき世の中を
憂しとやいはむあはれとやいはむ
622
かもめゐる沖の白洲に降る雪の
晴れ行く空の月のさやけさ
640
空や海海や空からともえぞ分かぬ
霞も波も立ち満ちにつつ
641
大海の磯もとどろに寄する波
破れて砕けて裂けて散るかも
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