『シンプルな情熱』
アニー・エルノー
堀 茂樹 訳
早川書房
先ごろノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーの1992年の作品。断捨離していたら出てきました。1993年の初版本。
妻帯者である男性との恋を文字通りシンプルにかつ情熱的につづった小説というよりエッセイや独白に近い作品。
たしか女性誌かなんかで紹介されていて買ったんだと記憶。表紙の写真や、帯に「翻訳権独占🖤早川書房」とハートマークが入っているあたり、扇情的に売っていこうとする感じがあります。
当時は初邦訳本だったのでアニー・エルノーという作家についてはまったく知らず、ましてや30年後にノーベル文学作家になるとは思いませんでしたが、知性も社会的地位もある女性がほとんど盲目的に、愚かといってもいいほどの情熱で恋をしていることを率直に書いていることに驚きました。
彼を待つためだけに服を選び、テーブルの準備をし、成人している息子たちには恋人がくるときは家に来ないように言うあたりをなんとなく覚えていました。
当時、著者は30代くらいだと思っていたんですが、告白どおりだとすると、彼女が恋愛をしていた時期は51歳。相手の男性は37歳。さすがフランス女性。妻帯者との恋なのに、本人も相手もそれほど罪悪感がなさそうなのもお国柄でしょうか。
女性誌を開けば星占いを見てしまったり、海外に行っても男に絵葉書を送ることだけを考えてしまうという恋。やってることは若い女の子のようですが、さすがにインテリなのでそんな自分を客観的に見つめて冷静に分析している文体はどこまでも知的。
どちらかというと彼と別れたあと、忘れようと苦しい日々を送っている後半に昔の私は共感したことを思い出しました。
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