
『家守綺譚』
梨木香歩
新潮文庫
本編は単行本で読みましたが、巻末に載っている綿貫の随筆『烏蘞苺記(やぶがらしのき)』を読みたくて文庫版を借りてきました。
本編でいうと「紅葉」と「葛」に登場する、「後輩の山内」が取ってきてくれた「西陣の織物業界が出している得意先配布用月刊誌の随筆」で、「竜田姫が晩秋の綾錦の衣を仕舞い込む、というような寓話的な終わり方をした」原稿ですね。
『家守綺譚』を読むまで知らなかったのですが、「竜田姫」は秋の女神。「竜田山」を神格化させたものということで、竜田山、竜田川は和歌にも多く詠まれています。
ちはやぶる 神世も聞かず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは
(在原業平)
嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は
竜田の川の 錦なりけり
(能因法師)
『家守綺譚』には春の女神、佐保姫もダァリヤの君の幼友達「佐保ちゃん」としてサラッと登場してます。
綿貫の随筆ですが、なるほど編集者である山内が「呉服屋の娘さん」は「業界誌の綿貫さんの随筆」を読んでいるはずだから「この縁談は流れるだろう」と言った意味がわかりました。
──落ち着いて下さい。この原稿もきっとそうに違いないが、今までのだって面白いには違いなかった。けれど、この著書と生活を共にしようという気になるような内容だったでしょうか。
非常な説得力だ。
(180ページ)
生真面目で浮世離れしていて、経済的なこととは縁遠そうで、普通の社会生活送れない人な感じが短い随筆から伺えてしまいます。
「風変わりな呉服屋の娘さん」なら竜田姫の衣替えを描いてみせた随筆を気に入りそうですが、綿貫征四郎さんはやっぱりサルスベリに懸想されたり、花鬼に暇乞いされたりしていてほしいです。
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