
『カザフ刺繍』
廣田千恵子、カブディル・アイナグル
誠文堂新光社
廣田千恵子、カブディル・アイナグル
誠文堂新光社
『大乙嫁語り展』のとき、ショップで販売されていて気になっていたのがこちら。
「中央アジア」とひとくくりにいっても広く、ここで紹介されているのは、モンゴル国バヤン・ウルギー県で暮らすカザフ人による伝統文様と刺繍技法です。
大きな木枠に布を貼って、かぎ針で刺していく刺繍技法は、自分で真似するにはレベルが高いですが、伝統文様や模様、モチーフの刺し方が掲載されているので、刺繍の心得がある人であればチャレンジできそう。
花、鳥といった文様のほか、羊、ラクダ、麦のモチーフがあるところが遊牧民族らしい。
「腎臓文様は多くの家畜を屠ることができる状態を想起させることから、家族に幸せをもたらすものとされる」というのもおもしろいです。
天幕型住居「キーズ・ウイ」の内部を覆う、壁掛け布「トゥス・キーズ」。
美しい布が何枚も飾られているのは圧巻ですが、家の中を美しく装飾する女性が「理想的なカザフの嫁」で、身の回りを飾ることができない女性は「仕事ができない」とみなされるとか。
カザフ人に生まれなくてよかったと思いつつ、これもひとつの文化ですね。
『乙嫁語り』でも刺繍の苦手なパリヤさんが嫁入り道具を作るのに苦労してましたね。(布仕度がおわらないと嫁に行けない。刺繍の出来で嫁として評価される。)
著者のひとりであるアイナグルさんは、1992年の社会主義体制の崩壊により、生きていくために自分でビジネスを始めるしかなくなり、カザフ刺繍の専門店をオープン。
女性たちの収入と伝統文化の存続のためにカザフ刺繍を伝える活動をしているということで、ここらへんにも刺繍素敵!だけではすまされない社会事情が現れています。
以下、引用。
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装飾行為は、カザフにおいて女性の大切な仕事のひとつとして認識されています。美しく装飾を施す女性は、「理想的なカザフの嫁」として社会的に讃えられます。一方で自分で身の回りを飾ることができない女性は、仕事ができないと見なされ悪い噂の対象になることもあります。
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「腎臓」をモチーフにした文様
腎臓がたくさん表に出ている状態とは、それだけたくさんの家畜を屠ることができるということを意味していて、家畜の数が多い豊かな状態を想起させるともいわれています。
国立民族学博物館
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