
『ギリシャ語の時間』
ハン・ガン
斎藤真理子 訳
晶文社
ハン・ガンの小説2冊め。
前作『菜食主義者』がなかなかに壮絶だったので、本が届いてもすぐに手にとって読めずにいました。読みだしたら今度はこれは急いで読む本ではないとゆっくり進めていたのでまた時間がかかりました。
「壊れたことのない人の歩き方を真似てここまで歩いてきた。」
「いかなる苦痛も味わったことがない人のように、彼女は机の前に座っている。」
『すべての、白いものたちの』の中の言葉ですが、ハン・ガンはつねに何かを失った人たちについて書いているように思います。今回は言葉を失った女性と、視力を失いつつある男性の物語なのでそこはとてもわかりやすい。
彼らの間にあるのが古典ギリシャ語という今はもう滅んだ言語だというのも象徴的。
斎藤真理子さんの翻訳とあいまって今回もとても美しい文章。詩のような、音もなく降る雪のような。物語の舞台は夏のようですが、寒々とした冬の雨空がよく似合います。


