『冬虫夏草』
梨木香歩
梨木香歩
新潮社
『家守綺譚』の続編。タイトルから勝手に冬にあうかと思って読み始めましたが、夏から秋にかけての物語でした。
友人・高堂の死の真相が次第にあきらかになる緊迫感がそこはかとなくただよっていた前作とは違い、ダァリヤの歌声が流れてきたり、ムジナが祭りにやってきたり、隣のおかみさんの柿の葉ずしが秋を急かしたり、あの世とこの世の堺が曖昧な日常がのんびりと綴られ、これはこれで楽しいと思って読んでいたら、最初の数章でのんびりとした日常が終わり、あとは愛犬ゴローを探す奇妙な旅へと変わります。
能登川駅、愛知川、永源寺、八風街道などの地名は検索すると出てくるので、綿貫の旅路は実際に歩けるものだと思います。
そこは綿貫さんなので河童の少年に会ったり、幽霊に頼みごとをされたりしながらイワナの夫婦の宿をめざします。
この目的のあるようなないような旅が長々と続くので、私的には前半ののんびりとした家守の日々の方が好みでした。
なんといってもゴローを探す旅なので、ゴローの噂や存在感はずっとあるものの、ゴローの不在が寂しい。高堂くんや隣のおかみさん、和尚、ダァリヤの出番ももっと欲しかったところ。
とはいっても、夏目漱石かというような流れるような古めかしい文体は美しく、読んでいて気持ちがいい。
氾濫の多い川沿いの街道だから神社や地蔵が多いという記述がありますが、都内の甲州街道を歩いていても庚申塔や地蔵やらに街道の歴史を感じるので、これはよくわかるなあと思いました。
◆関連書籍

梨木香歩
新潮社


