2023/09/06

『はじめてのアメリカ音楽史』

はじめてのアメリカ音楽史 (ちくま新書)

『はじめてのアメリカ音楽史』
ジェームス・M・バーダマン、里中哲彦
ちくま新書

ハンク・ウィリアムズトリュビュートライブの予習としてカントリー・ミュージックの勉強に読んでみました。
カントリーに特化した書籍が見つからなかったのでざっくりとアメリカ音楽史。
そもそもカントリー・ミュージックって何? ウェスタン、フォーク・ソングとどう違うの? あたりの知識のなさから読み始めているので、アメリカの歴史、黒人音楽を白人が取り入れていった過程、宗教音楽としてのゴスペル、労働歌から生まれていったブルーズなど、いろいろ興味深かったです。
アーティストと曲名、固有名詞のオンパレードなので、名前だけ聞いたことがあっても音楽と結びつかないところも多かったです。ここらへんは実際に聴いてみないとわかんないなぁ。
著者のバーダマンさんがメンフィス出身なのもあって南部に話偏りすぎじゃないかと思うところもありました。
ハンク・ウィリアムズについては
「彼はさまざまな意味で、戦後まもないころの南部を体現しています。アラバマの田舎臭さを全身にただよわせ、場末の酒場に入り浸っている雰囲気をもっていました。」
「土曜の夜は酔いつぶれるまで飲んで、日曜の朝になると教会で魂の救済を願うような、そうした矛盾した存在の象徴のように見えます。」
と書かれていて映画『アイ・ソー・ザ・ライト』とあわせて納得しました。
『アイ・ソー・ザ・ライト』という曲自体、神をたたえるゴスペルの系譜になるのかな。
参考になりそうな映画もたくさん紹介されていたのでここらへんもゆっくり見ていきたい。


2023/08/10

『風立ちぬ・美しい村』

風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)

『風立ちぬ・美しい村』
堀辰雄
新潮文庫

小淵沢に行ったので避暑地の物語的なものを読みたくて調べたらまっさきにこれがヒットしました。
軽井沢が舞台だと思っていたら、前日譚のような『美しい村』は旧軽井沢が舞台ですが、『風立ちぬ』のサナトリウムは富士見高原療養所がモデルでした。現在は富士見高原病院ですが2012年までは資料館として建物が残っていたとか。
富士見にはmountain bookcaseさんに行ったとき、少し歩きました。今ではだいぶ変わっているはずだけど、主人公が散歩した谷や雑木林を現在の風景に重ねてイメージしてみる。
堀辰雄は初めて読みましたが、風景の綴り方や文体のリズムが詩のようで美しいですね。
中村真一郎の解説に「堀辰雄の文学は、この世ならぬ、ある香りのようなもの、実在しない、素敵な夢のようなもの、現実であるには純粋すぎるもの、というふうに受けとられ」がちで「そのような作品を書いた作者は、やはりこの雑駁な社会には生きていなかった、人間ではない妖精のような存在だと、誤解される結果になっている。」とありますが、私もそれに近い感じで読みました。
病床の婚約者とともに山の中のサナトリウムで孤独に過ごす日々をどこか甘い夢のように描いているのですが、実際に堀辰雄は婚約者と療養所に滞在しているので、実体験をこんな風に書いてしまうなんて、この作家は現実も少し浮世離れして生きているんじゃないかと考えたりしました。
『美しい村』も実体験が元になっているとすると、軽井沢に滞在しているうちに若い女の子たちと知り合い、そのうちの一人と恋をして、数年後にまた同じ場所で別の少女と出会う、なんてどんなモテ男なんだ。思わず顔写真をチェックしちゃったけど、文学青年って感じですね。
堀辰雄が滞在して執筆したという信濃追分の湯屋旅館は現在ギャラリーに、『美しい村』のモデルとなった、つるや旅館なども残っているようなのでいつか行ってみたいです。


2023/07/27

『最初の悪い男』

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

『最初の悪い男』
ミランダ・ジュライ
岸本佐知子 訳
新潮社

初ミランダ・ジェライ。
読んだこともないのにリディア・デイヴィスと同列のように思っていたのは岸本佐知子訳だからなのか。
予想以上に変な話でした。
43歳独身のシェリルをはじめ、登場人物がみんな〝痛い〟。シェリルの妄想についていけなくて最初の数章は読み進むのに苦労しました。
その後の急展開から俄然話がおもしろくなって後半は一気読みしたんですが、中盤で予想外のハッピーエンドにしないところがまた。
ミランダ・ジェライ自身、この長編の前に、インタビュー集『あなたを選んでくれるもの』を出版していたりする人ですが、シェリルとクリーの関係は「フェミニストの連帯」を軽く超越してしまうので、どう受け止めていいのか。
彼女はすごい遠回りして自分の妄想を実現させたようにも思えるけれど、これは彼女が望んでいたことなのかどうか。最後まで奇妙な読後感が残りました。


2023/07/22

『アイ・ソー・ザ・ライト』

2015年公開。
カントリー・シンガー、ハンク・ウィリアムズの伝記映画。

9月に開催される『高橋和也 Presents Hank Williams 生誕100周年記念 Tribute Live!!! 』の予習として視聴しました。

ハンク・ウィリアムズを演じるのは『マイティ・ソー』のロキ様、トムヒことトム・ヒドルストン。ロキの頃から人気のある彼ですが、優男的な風貌に私は今ひとつ魅力がわからず。でも、今回のハンク役は寂しげな感じや笑顔で歌うときも笑っていない眼とか歌、演技ともとても良かったです。

奥さんオードリー役がエリザベス・オルセン。彼女も『アベンジャーズ』ですね。

そもそもハンク・ウィリアムズの知識がまったくなかったのですが、アメリカでは超有名人だからなのか、映画は全体的に説明不足でこれを見ただけでは脊椎の痛みやアルコール依存症を抱えながら過酷なツアースケジュールをこなしていた理由や、なぜ彼の歌がみんなに愛されたのか、その後のカントリーやロカビリーなどに与えた影響などはよくわかりません。

死亡シーンをばっさり省略してるのは驚き。人気歌手がキャディラックの中で孤独に死んでゆく、重要な場面だと思うのですが、ここ飛ばすんだな。

そこで本日は朝からハンク・ウィリアムズ祭り。ネットでハンクの生涯と代表曲をチェック→歌詞を和訳とともに確認しながらハンクのオリジナル版を聴く→さらに高橋和也バージョンの鑑賞を繰り返しています。

しかし伝説的カントリー・シンガーだけにwikiの「略歴」ですらめちゃくちゃ長い。「生い立ち」になるとお父さんの家系から始まる。ここはベースとして映画を見ていてよかったです。

カントリーの明るい曲調でも歌詞を見ると「君が去っていってとても寂しいんだ」みたいな歌が多く、妻オードリーとの愛憎関係が反映されている気がします。

映画では詳しく描かれませんが、奥さんも歌手でプロモーションもしているのにハンクだけが売れていき、自分が子育てしてる間に彼はツアー先で浮気しているのは耐えられなかっただろうなと。

派手な女性関係にしてもハンクの側の感情が映画ではわからないんですが、結婚はできないけど生まれてくる子供は認めるとかボビーに対してはある意味、誠実な気がします。
(生まれてきた娘やオードリーとの息子もカントリー・シンガーになってるんですね〜。)

高橋和也バージョンについてはラジオ番組で放送されたときの模様がYouTubeで公開されているのが助かります。ハンクによせて歌ってる声の良さももちろんですが、楽しそうに演奏してる笑顔がかわいいんだな。

ハンクのオリジナルはシンプルなので、エルビス・プレスリーの『Your Cheatin' Heart』や、カーペンターズ『Jambalaya』など、カバーのほうが聞きやすい。ここらへんにも彼の後世に与えた影響があるのかなと思います。

カントリー沼も深そうなのでライブまでゆっくり楽しみたいです。

2023/07/20

『魔女のシークレット・ガーデン』

魔女のシークレット・ガーデン

『魔女のシークレット・ガーデン』
飯島都陽子
山と渓谷社

@westmountainbooksさんが前に紹介していて気になっていた本。
魔女に関わる四季の植物をイラストや言い伝えとともに紹介する。
イラストがオシャレすぎて実際の花や木、効用が頭に入ってこないので実用性には欠けますが、ヤナギがヨーロッパでは異世界の境界に立つ木と考えられているなど、ケルトや北欧神話が興味深かったです。
魔女と呼ばれたのは薬草をつかさどる自然療法師だったのではという話、冬は庭を妖精や精霊にたくす、北欧神話のブルシンガメンの首飾りなども気になりました。
魔女人形に興味があるので横浜の『グリーンサム』にはいつか行ってみたい。


2023/07/18

『旅をする木』

旅をする木 (文春文庫)

『旅をする木』
星野道夫
文春文庫

死後20年以上たつというのにいまだに雑誌で特集されたり写真展が開かれたりする星野道夫。うちの母もNHKで特集されたりするとだいたい見てます。そんなこともあって食わず嫌いだったんですが、手始めに一番有名なこのエッセイから。
星野道夫に抱いていたイメージは、厳冬期にはマイナス50度にもなるというアラスカにわざわざ写真を撮りに行く人の気持ちはよくわからないというのが正直なところで、それは読み終わった今も同じ。
「写真を撮りに行っていた」のではなく、アラスカで15年以上も暮らしていた人であるとか、16歳のときにひとりアメリカへ2ヶ月の旅をしたとか、本書であらためて知ったこともありました。
アーミッシュやグッチン・インディアンなど、基本的に人に出会うための旅をした人なんだなというのも今回の再認識。
彼は写真家だというのもあって言葉では彼の見た風景というのは伝わりづらい。その場にいないと感じられない想いというのもなかなか共感しづらいところがあります。
池澤夏樹の解説がさすがで
「『旅をする木』で星野が書いたのは、結局のところ、ゆく先々で一つの風景の中に立って、あるいは誰かに会って、いかによい時間、満ち足りた時間を過ごしたかという報告である。実際のはなし、この本にはそれ以外のことは書いてない。」
すべて後付けになってしまうのですが、20代で遭難した友人や亡くなったブッシュ・パイロットたちを通して、彼が常に人生の短さを意識しているのは印象的でした。


2023/07/17

『自由研究には向かない殺人』

自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫 M シ 17-1)

『自由研究には向かない殺人』
ホリー・ジャクソン
服部京子 訳
創元推理文庫

2、3年前に話題になったヤングアダルトミステリー。タイトルと表紙が夏休みっぽくて手にとってみました。
『自由研究に向かない殺人』という邦題はすばらしいけれど、原題は『A Good Girl’s Guide to Murder』。
EPQ(Extend Project Qualification)は「夏休みの自由研究」的な軽いものではなく、大学進学に必要な卒論くらいな感じのようです。
女子高生ピッパがこのEPQのテーマに自分の街で5年前に起きた殺人事件を選択し、真相にせまっていくという設定がまずおもしろい。
「私の自由研究に協力してください〜」とEPQを盾に警察や記者、事件関係者にインタビューし、Facebookやショートメッセージを追いかけて失踪した女生徒の交友関係を調査しているのも今どきの若者らしい。(原書発売が2019年で、物語の舞台は2017年。)
調査結果がレポートの形で読者にオープンにされているのも読みやすい。
調べていくうちに被害者である女生徒の裏の顔が見えてきたり、高校生たちの友情が必ずしも優しい関係ではなかったり、小さな街だから誰もが容疑者になりうる立場だったり。
ネットを使ったイジメや、カースト上位しか招待されないパーティーにもイギリスの高校生たちの青春が垣間見れます。特に「高校生の頃、あの子に憧れて、あの子の取り巻きだった自分は好きじゃない」と5年後に語る女性の言葉がグッときました。
犯人の動機が弱すぎるとか、なぜ主人公は危険だとわかっていてひとりで殺人犯に立ち向かいがちなのか(ハリウッド映画のクライマックスなんかでよくある展開)、関係者に与えたその後の影響を思うとハッピーエンドでいいのかとか思ったりはしますが、ヤングアダルト世代のための小説として楽しく読みました。