
『ポアロのクリスマス』
ハヤカワ文庫


2022年公開。高橋和也出演作。
※ネタバレ含みます。
18歳の高校生と48歳のおじさんが過去の分岐点をふりかえる追想の旅に出る物語。
脚本、演出、演技ともに舞台色が強いので映画ならではの場面がもう少し欲しかったところではありますが、高橋和也目当ての私としては表情や目の演技をアップで堪能できるのは嬉しいところ。
ほとんどのシーンが舞台上で展開されるのは予算の都合というのもあるだろうけれど、この舞台が「時空がアレしてる」ところでそれ以外の部屋とか病室なんかは過去と未来の現実なのかなと解釈。
過去に戻って未来を変えるストーリーは最近だと『東京卍リベンジャーズ』あたりでも見られる定番ものですが、途中から役割が逆転して過去の自分が未来の自分を変えていくのがおもしろい。
高橋和也は少年の瞳をしたおじさんなので高校生と並んでも違和感なし。無理を承知でいうと18歳の文也を若き日の高橋一也に演じてほしかった。人生なめてる感じの藤原大祐くんも良かったけど、これ2人のどちらにも容貌よせてないんですよね。
脚本も全体的にゆるいというか余白が多く、お母さんとの確執はもっと描いておくべきなんじゃないかとか、なぜ彼は売れない役者を続けているのか、このジャーニー自体が夢なのかなんなのか設定があいまいだと思ったりもするのだけど、あまりそれをやると語るに落ちるからなあ。
そもそも過去の分岐点を振り返るというのはSF設定なしでもできることなので、ラストは人違いではなく、過去の母への態度を改めたことで未来の母との関係が修復された結果なのではないかと勝手に解釈しました。
脚本に余白があるぶん、ここらへんは見る人、見るタイミングや感情によって解釈がいくらでも変わりそう。
ひまり役の伊礼姫奈がちょっといいなと思ったら『推し武道』の舞菜ちゃんであり『大奥』の祥子姫だった。役によって全然雰囲気変わるのね。18歳のくるみ役、髙石あかりも要チェック。
at 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
井上ひさし脚本によるこまつ座公演。
(そもそもこまつ座が井上ひさし作品だけを上演しているというのも今回初めて知りました。すみません。)
終戦直後の満州、大連が舞台。
今回は予習なし。歴史的にはなかなか難しい設定なのですが、セリフの中でわかりやすく状況が説明されていました。
全編喜劇で笑える作品なんだけど、彼らの状況はどん詰まりで、芝居をすることが希望であり、生きる支えでもあるんですね。
幕が上がって最初のセリフを言う前に和也さん演じる塩見さんが泣きそうな顔でふっと笑うんですが、もうその表情にやられます。
あとコーラスを歌い終わったときの顔がまた良かった。
こういう細かい表現も含めて丸ごとダイレクトに楽しめるのは舞台ならでは。
嫌な奴だった市川新太郎が芝居の稽古を通して変わっていって「シベリアでも芝居をするさ」ってセリフにグッときました。
あんなに書けなかった脚本がひとりの若者を救うためには書けるんだなあというのもおもしろい。和也さんが一彦役だった初演も見てみたかった。
モリエールとチェーホフはさすがにわからないけど、ギリシャ悲劇とか高田馬場とか演劇のパロディが詰め込まれている構成も楽しかった。
こまつ座だけに年配の落ち着いたお客様も多かったです。
トークショーのときにお隣りになったおばさまは「お話がおもしろいのでこまつ座は何度も見に来てる」そうで、私が初めてだと言うと「どなたかお目当ての方が?」と聞かれたので正直に「高橋和也さんの舞台が見たくて」と答えました。
ラフなセーターに着替えて登場した和也さんのナチュラルなかっこよさに私が息を飲んでいると、おばさまが「かっこいいですね」とささやいてくれました。
「でしょでしょ」という気分になって(何様)この日これがいちばん嬉しかったのです。

