『パブリック・スクール
イギリス的紳士・淑女のつくられかた』
新井潤美
岩波新書
「パブリック・スクールは好きですかー?」
「おー!」
といっても私のパブリック・スクールのイメージは、ウィリアム王子やハリー王子、エディ・レッドメインの通ったイートン校であり、『ハリー・ポッター』のホグワーツだったりするので、こちらを読んでみました。
イギリスにおけるパブリック・スクール成立の歴史と、小説、映画などに見られるイメージの変遷を中心に解説されています。
驚くのは階級と教育が分かち難くむすびついているところ。パブリック・スクールはアッパー・クラスおよびアッパー・ミドル・クラスの子弟が通うものであり、ロウアー・ミドル・クラスやワーキング・クラスの子供たちはグラマー・スクールに通う。
アッパー・ミドル・クラスとロウアー・ミドル・クラスは同じ「ミドル・クラス」でもまったく違う階級。
パブリック・スクールの「パブリック」は公立ではなく、私塾や家庭教師の「プライベート」に対する「パブリック」。
理想的な教育の場としてのパブリック・スクールのイメージは「学校物語」を通してイギリス文化となり、ワーキング・クラスの子供たちにとっても憧れの対象となり、彼らの通うグラマー・スクールもパブリック・スクール的なものを模倣していく。
こうやってみていくと、実際のパブリック・スクール以上に、そのイメージの文化的影響が大きい気がします。
たとえば日本では『キャンディ・キャンディ』にロンドンの寄宿学校、聖ポール学院が登場しますが、これなんかもパブリック・スクールのイメージ(モデルかどうかはわかりませんが実際にセント・ポールズ・スクールというパブリック・スクールがあります)。
最近だと『SPY×FAMILY』のイーデン校はまんまイートン校の外観ですし、イートン校の優秀な生徒たち「キングズスカラー」のパロが「インペリアルスカラー」。
ちなみにAmazonで「パブリック・スクール」で書籍検索すると当然のようにBLものが並びます。まあ、そうだよね。
以下、まとめ。
579年、カンタベリーにキングズ・スクール開校
教会に併設され、グラマー・スクールと呼ばれるラテン語の教育をする役割
1382年、ウィンチェスター・コレッジ創立
国の政治を司る聖職者に良質の教育を与える目的
1440年 イートン・コレッジ創立
16世紀 グラマー・スクール創立の黄金時代
1561年 マーチャント・テイラーズ・スクール
1567年 ラグビー・スクール
1572年 ハロウ・スクール
事業に成功して富を得たミドル・クラスの人々が、自分のように成功する機会を貧しい少年に与えるために開かれた。
18世紀の終わりごろには、学費を払う生徒によって経営が成り立つようになり、慈善的な要素がほとんどなくなる。
アッパー・クラスの子弟を多く受け入れ、名が知られるようになったグラマー・スクールを、個人の私塾と区別するために「パブリック・スクール」と呼ぶようになった。
パブリック・スクールの「パブリック」とは、個人の家での教育(プライベート)との対比で使われた。
19世紀ごろでは、紳士の教育として私塾(private education)とパブリック・スクール(public education)のどちらがよいかということが論争の的になっていた。
ファギング(fagging)制度
下級生が上級生について、その身の回りの世話をしたり、使い走りをする代わりに、上級生の庇護下におかれる。
ラグビー・スクールの校長トマス・アーノルドによるパブリック・スクールの改革
学校長協会の設立
1857年『トム・ブラウンの学校生活』
「学校物語」により理想化されたパブリック・スクールのイメージが広まる。
1944年 公立の中高等学校制度が整備
1976年 公立のグラマー・スクール廃止、コンプリヘンシヴ・スクールに移行