2025/02/11

『カザフ刺繍』

カザフ刺繍 中央アジア・遊牧民の手仕事 伝統の文様と作り方

『カザフ刺繍』
廣田千恵子、カブディル・アイナグル
誠文堂新光社

『大乙嫁語り展』のとき、ショップで販売されていて気になっていたのがこちら。

「中央アジア」とひとくくりにいっても広く、ここで紹介されているのは、モンゴル国バヤン・ウルギー県で暮らすカザフ人による伝統文様と刺繍技法です。

大きな木枠に布を貼って、かぎ針で刺していく刺繍技法は、自分で真似するにはレベルが高いですが、伝統文様や模様、モチーフの刺し方が掲載されているので、刺繍の心得がある人であればチャレンジできそう。

花、鳥といった文様のほか、羊、ラクダ、麦のモチーフがあるところが遊牧民族らしい。
「腎臓文様は多くの家畜を屠ることができる状態を想起させることから、家族に幸せをもたらすものとされる」というのもおもしろいです。

天幕型住居「キーズ・ウイ」の内部を覆う、壁掛け布「トゥス・キーズ」。
美しい布が何枚も飾られているのは圧巻ですが、家の中を美しく装飾する女性が「理想的なカザフの嫁」で、身の回りを飾ることができない女性は「仕事ができない」とみなされるとか。
カザフ人に生まれなくてよかったと思いつつ、これもひとつの文化ですね。

『乙嫁語り』でも刺繍の苦手なパリヤさんが嫁入り道具を作るのに苦労してましたね。(布仕度がおわらないと嫁に行けない。刺繍の出来で嫁として評価される。)

著者のひとりであるアイナグルさんは、1992年の社会主義体制の崩壊により、生きていくために自分でビジネスを始めるしかなくなり、カザフ刺繍の専門店をオープン。
女性たちの収入と伝統文化の存続のためにカザフ刺繍を伝える活動をしているということで、ここらへんにも刺繍素敵!だけではすまされない社会事情が現れています。

2025/01/25

甲州街道を歩こう! 芦花公園〜布田 その2

仙川駅の近くにあるキューピーの建物

昔はここにキューピーの工場があって中学の時には授業で見学にきました。
現在はキューピーマヨネーズ博物館マヨテラスになっています。

時計もキューピーさん。

これもいきなり人様の家の門前にある「瀧坂旧道」の標石


驚くのは「馬宿川口屋」と刻まれているのが川口さん宅の門前だということ。
馬宿を営まれていたお家が現存しているわけですね。

現在の滝坂

「雨が滝のように流れる」難所だったので滝坂なのですが、それほど急な坂でもない?と思ったら、改修工事により今では勾配が緩やかになっているそうです。

薬師如来坐像

「交通安全」とありますが路上駐車の車に埋もれている。

かわいいオーラを発する「内田平和堂」


大正12年創業の印刷所だそうで、店頭に滝坂の歴史などが掲示されていておもしろかったです。

金子のイチョウ

妙円地蔵

深大寺案内地蔵
このへんはもう深大寺が近いのか。

野川にかかる馬橋


常性寺

布田駅

調布までたどり着きたかったのですが、時間が押してきたので本日はここで終了。

甲州街道を歩こう! 芦花公園〜布田 その1

御宿場印をもらうだけではなんなので続きも歩いてきました。

前回、千歳烏山駅まで歩いていますが、通り過ぎてしまったところがあったので、ちょっと戻って芦花公園駅からスタート。

大橋場跡
橋の欄干を模った大橋場跡の碑とお地蔵さん、庚申塔が並んでいます。

前回通り過ぎてしまったのがこれ。
この付近の歴史をネットで調べていたら、この大橋場とは関東大震災のときに朝鮮人虐殺の現場となった場所なんですね。

現在では暗渠となっていますがここには烏山川があり、その名のとおり橋がかかっていました。関東大震災のとき、災害の片付けに駆り出された朝鮮人の人夫たちを乗せたトラックがここで脱輪停車し、おりからの噂で自警していた村民に襲撃されたということです。

世田谷に長いこと住んでいたのにこの歴史をまったく知りませんでした。



大橋場跡の後ろはチトセホテル。渋いホテルだなと思ったらラブホテルでした。

道をはさんだ向かい側には高級マンション。

ネットで調べると、ここらへんは窪地で水が溜まる場所で、マンション建設時に雨水用のタンクを地下に作ることが地元との協議で決められたとあります。
掲示板情報なので真偽は定かではありませんが、川や用水路の多い土地だったのでいろいろ問題はあったのかと推測します。

南烏山りんれい広場にある「せたがや百景」標石

「45 旧甲州街道の道筋」

「南烏山から給田へとつづく道はかつての甲州街道。昔の街道筋を偲ばせる風景はほとんど残っていないが、実はこの道筋そのものが街道だったことを忘れるわけにはいかない。道の由来を知れば、その時代、時代の道筋の風景を脳裏に浮かべることもできる。」
と書かれています。

石仏石塔群

宍戸コンクリート工業
工場とか古い商店とかがわりと残っています。

人様の家の門前に立っていてびっくりする新一里塚

「内藤新宿より三里(11.78km)」と刻まれています。
説明板によると、「明治時代に計測し直して位置が変更したため新しく一里塚を立てた」ものらしいです。一時期、区立郷土資料館にあったものを昭和59年に元の位置に近い現在地に移したとのこと。

給田観音堂


観音堂自体よりも隣りの慰霊碑の迫力におののく。
昭和41年建立ですが、「みたま」とあったので戦没者のためのものでしょうか。


「この木なからましかば」的な警告。

仙川にかかる大川橋

昌翁寺

仙川一里塚跡

日本橋から20km
結構歩いたつもりなんですが、まだこんなもの。



2025/01/23

甲州街道を歩こう! 御宿場印

御朱印ならぬ御宿場印というものがあると知り、もらってきました。
1枚300円。


下高井戸・上高井戸宿の販売所は下高井戸八幡神社。
桜上水駅から徒歩15分くらいですが、住宅地をぬけていくのでGoogleマップがなければたどりつけない。住宅街にいきなり立派な鳥居が出現します。


ながいこと桜上水駅を利用してましたが、ここにこんな神社があるとは知らなかったよ。


新宿は観光案内所で販売しています。
日本橋はまた再訪したときにでもゲットしたい。


2023年に始まったプロジェクトらしいです。
34宿全部集めると一万円超えるのか〜という気はしますが、御朱印帳よりスタンプラリー感があって私向きかなと。
私の甲州街道てくてく歩き自体がどこまで続くかわかりませんが、ゆるく集めてみようと思います。

詳しくはこちら



2025/01/18

『冬虫夏草』

冬虫夏草 

『冬虫夏草』
梨木香歩
新潮社

『家守綺譚』の続編。タイトルから勝手に冬にあうかと思って読み始めましたが、夏から秋にかけての物語でした。
友人・高堂の死の真相が次第にあきらかになる緊迫感がそこはかとなくただよっていた前作とは違い、ダァリヤの歌声が流れてきたり、ムジナが祭りにやってきたり、隣のおかみさんの柿の葉ずしが秋を急かしたり、あの世とこの世の堺が曖昧な日常がのんびりと綴られ、これはこれで楽しいと思って読んでいたら、最初の数章でのんびりとした日常が終わり、あとは愛犬ゴローを探す奇妙な旅へと変わります。
能登川駅、愛知川、永源寺、八風街道などの地名は検索すると出てくるので、綿貫の旅路は実際に歩けるものだと思います。
そこは綿貫さんなので河童の少年に会ったり、幽霊に頼みごとをされたりしながらイワナの夫婦の宿をめざします。
この目的のあるようなないような旅が長々と続くので、私的には前半ののんびりとした家守の日々の方が好みでした。
なんといってもゴローを探す旅なので、ゴローの噂や存在感はずっとあるものの、ゴローの不在が寂しい。高堂くんや隣のおかみさん、和尚、ダァリヤの出番ももっと欲しかったところ。
とはいっても、夏目漱石かというような流れるような古めかしい文体は美しく、読んでいて気持ちがいい。
氾濫の多い川沿いの街道だから神社や地蔵が多いという記述がありますが、都内の甲州街道を歩いていても庚申塔や地蔵やらに街道の歴史を感じるので、これはよくわかるなあと思いました。


◆関連書籍
 
家守綺譚
梨木香歩
新潮社

2025/01/06

『やかまし村はいつもにぎやか』

やかまし村はいつもにぎやか (岩波少年文庫 130)

『やかまし村はいつもにぎやか』
アストリッド・リンドグレーン
大塚 勇三 訳
岩波少年文庫

『やかまし村』シリーズ3作目。
1952年の作品。
冬に読んでしまったけれど、リーサとアンナが「春の場所」をもっているとか、「夏至の柱」を立てる話とか、サクランボ会社とか、ザリガニとりとか、おもに春から夏の出来事がつづられている。
あいかわらず大きな事件は起こらないけれど、「やかまし村は、いつでもたのしいんです。」
1章で観光にやってきた人が言う「やかまし村はたいくつで、つまらないかもしれませんね」に対する答えが、最終章の「やかまし村にすんでない人は、きのどくだとおもうわ」。
この全肯定よ!
解説で長谷川摂子(『めっきらもっきらどおんどん』の作者ですね)が書いているように、ザリガニとりのキャンプの場面では私も泣きそうになりました。
「真実、楽しかった、という思い出があってこそ、人生を肯定してしっかり生きていける」と長谷川摂子は書いていますが、この「真実、楽しかった思い出」が『やかまし村』にはあるから、楽しいのに泣きたくなるのかなあ。
すばらしい挿し絵はイロン・ヴィーグランド。訳者・大塚勇三によると、合本版の挿し絵がみごとだったのでそちらのを採用したとのこと。ふてくされてるリーサとか、かわいくない感じが絶妙にいいんだよな。


◆関連書籍

やかまし村の子どもたち (岩波少年文庫 128)
アストリッド・リンドグレーン
大塚勇三 訳
岩波少年文庫

やかまし村の春・夏・秋・冬 (岩波少年文庫 129)
『やかまし村の春・夏・秋・冬』
アストリッド・リンドグレーン
大塚勇三 訳
岩波少年文庫

2024/12/27

『地球再生型生活記』

地球再生型生活記 土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザイン

『地球再生型生活記』
四井真治
アノニマ・スタジオ

夏の間に刈り取った雑草を庭の隅に置いておいたら、放置していただけなのに下の方は土になっていて自然のサステナブル力ってすばらしいと思いました。

ちゃんと雑草コンポストを作るべくネットを調べていたら紹介されていたのがこちら。
知らずに読みましたが、2007年より山梨県北杜市に移住し、家族で生活実験を続けているとのこと。

家から出る生ゴミだけでなく、コンポストトイレでおしっこを液肥として利用したり、排水を浄化するバイオジオフィルターで水辺を作ったり、持続可能な暮らしを実践されています。

生活実験をする元となった「パーマカルチャー」について、循環するいのちの仕組みについての著者の考えが延々と書かれているので、雑草コンポストの作り方を知りたかっただけの私にはなかなか壮大な話ではありましたが、「住んでいる人がただ生活するだけで環境が良くなるような仕組み」というのは昨今のSDGsよりずっと具体的で未来のあるデザインだなと思いました。

とりあえず、家でもできそうなところで、雑草コンポスト、雨水タンク、バイオジオフィルターあたりをめざしてみたいと思います。