
『ポアロのクリスマス〔新訳版〕』
アガサ・クリスティー
アガサ・クリスティー
川副 智子 訳
ハヤカワ文庫
ポアロシリーズ17作め。1938年の作品。
クリスティー文庫のポアロシリーズは34作あるので、やっと半分です。
『ポアロのクリスマス』は2003年の村上啓夫訳を2年前に読んでますが、順番にしたがって新訳版も読んでみました。
細かいところまでは覚えてませんが、全体的にセリフがやわらかく読みやすくなっている印象です。
(村上訳)
「あなたは、大人の節度ある眼でそれを回想するかわりに、子供の判断でそれを見ようとなさるからですわ」
(川副訳)
「過去に起きたことを当時の少年の気持ちで判断してはだめ。もっと穏やかに、おとなの目で振り返らなくては」
さすがに犯人もトリックも覚えているので、伏線回収しながら読みましたが、いや、これ、犯人わからないでしょ。
森昌麿の解説に前作『死との約束』から「家庭内の不協和音」、「殺されねばならない存在」という要素が引き継がれつつ、中近東ではなく、英国のお屋敷に原点回帰している、とありましたが、これはなるほど。
「殺されねばならない存在」が殺されることによって「家庭内の不協和音」が解消され、ハッピーエンドになってるんですよね。
ミドルシャー州の警察本部長ジョンスン大佐は『三幕の殺人』からの再登場。思いっきり『三幕の殺人』の犯人がネタばらしされています。『もの言えぬ証人』など、ほかの作品でもありましたが、当時はアガサ・クリスティー作品を順番に読んでいて当然だったんでしょうか。
(134ページ)
「クリスマスには、善意の精神なるものがあります。それは、おっしゃるように、〝するべきこと〟なのでしょう。昔の仲たがいが修復され、かつて意見の合わなかった者同士が、一時的にせよ和解するべきなのでしょう」
「で、家族が、一年じゅう離ればなれでいた家族たちが、また一堂に会するわけです。そうした状況のもとでは、友よ、非常に強い緊張が生まれるということを認めなければなりません。もともと互いをよく思っていない者同士が、打ち解けているように見せなければならないというプレッシャーを自分にかけるわけですから! クリスマスにはとてつもなく大きな偽善が生まれます。」
(378ページ)
「このクリスマスは笑って過ごすつもりだったの! イギリスのクリスマスはとっても愉しいって、本で読んだから。焼きレーズンを食べたり、炎につつまれたプラム・プティングが出てきたり、薪に似せたユール・ログっていうケーキもあったりするのよね」





