2024/09/16

『新版 枕草子』下巻

新版 枕草子 下巻 現代語訳付き (角川文庫 黄 26-2)

『新版 枕草子』下巻
清少納言
石田穣二 訳注
角川ソフィア文庫

約1ヵ月かかって下巻読了。
あらためて読んでみると、1000年前の作品を注釈付きとはいえ原文で読んでもなんとなく意味がわかり、共感できるって日本語すごいし、清少納言すごいなあ。

「春はあけぼの」の冒頭もそうですが、
たとえば、

〔二五〕にくきもの
新参の女房が、古参の人をさしおいて、いかにも事情に通じたような顔つきで、新しく来た女房に教えるようなことを言い、なにかと世話を焼くのも、ひどくにくらしい。

あけて出はいりする所を、しめない人、ひどくにくらしい。

〔二六〕心ときめきするもの
髪を洗い、お化粧をして、かおり高く香のしみた着物など着た時の気持。そういう時は、別段見る人も居ない所でも、自分の心の中だけはやはりはずんだ気持になる。
約束の男を待っているような夜は、雨の音や風の建物を吹きゆるがす音にも、はっと胸の騒ぐものである。

〔二七〕過ぎにしかた恋しきもの
去年使った夏扇。

〔三〇〕
説教の講師は、美男子なのがよい。夢中になって、ひたと講師の顔を見守っておればこそ、その説き聞かせる仏法のありがたさも感得できるというものだ。

現代で読んでも、あー、わかるわかると思うものなあ。

そして昔読んだときは人物関係がよくわかっていなかったのですが、中宮定子はもちろん、道隆や伊周についても賛辞を惜しまず描写されているんですね。

雪の降り積もった日に訪ねてきた伊周に
定子「雪で道もないと思いましたのに、どうしてまあ」
伊周「殊勝なものと、御覧くださるかと思いまして」
というやりとりは
「山里は雪降り積みて道もなし今日来む人をあはれとは見む」の和歌をふまえてるんですね。なんて知的おしゃれ。しかも伊周が着ているのは紫の指貫。「雪に映えて見事」と書かれています。

「この世から消えてしまいたいというときでも、上質の紙が手に入ると気分がなおって、生きていてもいいかなと思います」と清少納言が言ったのを覚えていて、里下りしている清少納言に中宮が上質の紙を贈ってくれたエピソードとか。

そうやって読むと『枕草子』とは滅びゆくものに捧げられた文学であり、それが1000年の時を超えて心に響くのだなあと思います。

(393ページ)
月の明るいのをながめるくらい、遠く遥かなことが思われて、過ぎ去ったことの、情けなかったこともうれしかったことも、趣深いと思われたことも、たった今のことのように思われる時がほかにあろうか。

◆関連書籍
新版 枕草子 上巻 現代語訳付き (角川文庫 黄 26-1)
『新版 枕草子』上巻
清少納言
石田穣二 訳注
角川ソフィア文庫

かさねの色目 平安の配彩美 (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)
『かさねの色目 平安の配彩美』
長崎盛輝 著
青幻舎ビジュアル文庫

2024/09/06

『家守綺譚』

家守綺譚

『家守綺譚』
梨木香歩
新潮社

和也ファンの方に教えていただいて、青春アドベンチャー『家守綺譚』を聴きました。
2005年放送のラジオドラマ。高橋和也は主人公の綿貫征四郎役。
聴き始めたのが台風10号が来るとか来ないとかで、残暑とゲリラ豪雨が続く頃。
夏バテなのか熱中症なのか体調不良で、ラジオならゴロゴロしながらでも聴けるかなと。

亡き友、高堂の古い家の家守をしている綿貫。
雨の音、虫の声、風の音がラジオから聞こえてくるのか、家の庭なのかわからなくなる環境で聞けたのが心地よかったです。

(29ページ)
じっとして机の前に座っていると、ざぁーという雨の音が縁の回り、家の回り、庭のぐるりを波のように繰り返し繰り返し、だんだん激しく取り囲む。その音を聞いていると、何かに押さえつけられてでもいるように動けなくなる。さながら雨の檻の囚人になったような気になる。

庭のサルスベリに懸想されたり、亡くなったはずの高堂が掛け軸から現われたり、狸に化かされたり、河童や子鬼や人魚が庭にやってきたり。不思議なことが次々と起こるけれど、最初のうちは驚きつつも、だんだんと「そんなこともあるやもしれん」という感じに自然に受け止めている綿貫。近所のおばさんも和尚も後輩の山内も、そういうものとして驚きもしない。

(14ページ)
七輪と鉄鍋を座敷の前の縁側に持ち出して肉を焼いていたら、匂いにつられたのか、急に掛け軸が揺れ、どっこいしょと、高堂が出てきた。
──また突然現れるのだな。もう雨は要らぬのか。

(30ページ)
──何ですかこれは。
私はちょっと棒の先を揺すって見せた。おかみさんは、
──河童の抜け殻に決まっています。
と、自信満々で応えた。
──何故そんなことまでご存知なのか。
私は訝しく思いつつ訊いた。おかみさんはちょっと哀れむように私を見、
──一目見れば分かります。
私には分からなかった。

(70ページ)
──ここは高堂先輩のご実家だったのですよね。
山内は縁側に腰掛けて、持参してきたひやしあめを飲んだ。
──ああ、ときどきくるよ。さっきもきた。

ラジオの綿貫の「ああ、ときどきくるよ。さっきもきた。」の言い方がとても良かった。
奇妙なことだと承知しながら、よくあることだと平静をよそおっているような。

そういえば私は梨木香歩の原作本をもっていたのだったと読み始めました。
当然ながら脳内ナレーションは高橋和也の朗読。
実は10年以上前に「こういうの好きだと思う」と友人に渡されたのをそのまま借りパクのような形で持っていて、ずっと読んでいなかったという。ほんと申し訳ない。こういうの好きです。

ラジオでははっきりと言及されていなかったと思いますが、物語は100年すこし前、明治のあたりが舞台らしい。
年代がわかる事柄として1890年に起こったエルトゥールル号遭難事件が出てきます。
文章もそれにあわせているのか、ところどころ夏目漱石か?というような文体だったり、「偶々(たまたま)」とか読めない漢字がでてきたり。

疎水、湖といった描写から高堂の家があるのは山科あたりらしく、モデルとなった場所の地図などもネットを調べるとでてきます。
「竜田姫」は秋の女神で、「佐保姫」は春の女神であることもいまさら知ったり。(もしかして常識ですか?)

(67ページ)
昨夜大風が吹いて、湖の禊が済んだので、竹生島の浅井姫命のところへ、竜田姫が秋の挨拶にいらしたのだ。

※「最近訳出されたロセッティの文章」というのはダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの「ゑすがた」で、蒲原有明の訳詩集「常世鈔」の一遍ではないかいう考察もこちらにありました。

あの世とこの世の堺が曖昧で、亡くなった人や異界のものたちと交流できてしまうのも、琵琶湖に近い、この土地だからなのか。

短編が追加されているらしい文庫版や続編『冬虫夏草』も読んでみたいと思いますが、この単行本、新潮社装幀室の仕事がすばらしいです。


◆関連書籍
家守綺譚 (新潮文庫)

梨木香歩
新潮文庫

2024/09/02

『なつのひかり』

 

なつのひかり (集英社文庫)

『なつのひかり』
江國香織
集英社

江國香織の初期の作品、『きらきらひかる』とか『ホーリーガーデン』とか『こうばしい日々』とかが好きで、これはラファエルの天使たちの表紙に惹かれて発売当時に買ったもの。1995年初版本。
(文庫版の表紙も天使なので何か意味があるんだろうけど、本文には出てこず。)

しかし、あまり好きになれず、一、二度読んでそのままにしており、引っ越しのさいに処分しようと思ったものの、夏にもう一度読んでからにしようと放置。やっと今年の夏に再読しました。

帯には「1993年の夏」となっているのは雑誌掲載が1993年だったからなのかもしれないが、特に本文中には何年の物語という記載はなし。しかしながら当然というか、1993年の夏は今よりずっと涼しい。猛暑の中読んでいると違和感を感じるほどでした。

(12ページ)
しゃくなげの咲いている家を通りすぎ、三輪車の置きざりにされたアパートを右に曲がって、大通りにでる。私は、日陰のない道を歩くのが好きだ。あかるすぎて、時間がとまっているように見える。白っぽい風景はめらめらと温度をあげ、街の音をどこかに閉じこめてしまう。

(147ページ)
子供の頃、夏の夕方が好きだった。自由と不自由のあいだみたいな、心もとなくて不安な感じが好きだった。
心のどこかで、自分でもそれとわからないうちに、夏の夕方には淋しさを好んで味わっていたような気がする。

ファミリーレストランとバーのバイトを掛け持ちしながら、昼間は野菜売りのおばさんの屋台で本を読んで過ごす。江國香織の登場人物のこのフワリとした生き方、ああこの感じは好きだったなと思いながら読む。

隣の少年が飼っているヤドカリにストーカーされたり、義理のお姉さんが家出したり、物語はだんだんと奇妙な方向へと動きだし、このあたりからついていけなくなり、ああこれがダメだったんだなと思い出す。兄に対する近親相姦的な愛情もよくわからない。(吉本ばなな、川上弘美、現代女性作家の作品にブラコンの主人公多くないか?)

こういう奇妙な物語は「現代版不思議の国のアリス」とか言われがちだけど、ようするに訳がわからないということ。ちょっと変わった登場人物たちがどんどん変な世界へ進んでいってしまう物語は初期の村上春樹っぽい感じもある。これは当時の江國香織が村上春樹っぽいものを書きたかったわけではなく、1990年前半という時代がどこへ行くのかよくわからない、そういう雰囲気の時代で、それを反映しているのかなとも思います。

小説全体の完成度が未熟なところはありますが、まだ洗練されていない不器用な江國香織が懐かしくも感じました。


2024/08/24

クリスティー文庫 リスト

ポアロ
1 スタイルズ荘の怪事件         1920
2 ゴルフ場殺人事件                 1923
3 アクロイド殺し         1926
4 ビッグ4                 1927
5 青列車の秘密                 1928
6 邪悪の家                 1932
7 エッジウェア卿の死         1933
8 オリエント急行の殺人         1934
9 三幕の殺人                 1935
10 雲をつかむ死                 1935
11 ABC殺人事件         1935
12 メソポタミヤの殺人         1936
13 ひらいたトランプ         1936
14 もの言えぬ証人         1937
15 ナイルに死す                 1937
16 死との約束                 1938
17 ポアロのクリスマス         1938
        ポアロのクリスマス〔新訳版〕
18 杉の柩                 1940
19 愛国殺人                 1940
20 白昼の悪魔                 1941
21 五匹の子豚                 1943
22 ホロー荘の殺人         1946
23 満潮に乗って                 1948
24 マギンティ夫人は死んだ 1952
25 葬儀を終えて                 1953
26 ヒッコリー・ロードの殺人 1955
27 死者のあやまち         1956
28 鳩のなかの猫                 1959
29 複数の時計                 1963
30 第三の女                 1966
31 ハロウィーン・パーティ 1969
32 象は忘れない                 1972
33 カーテン                 1975
34 ブラック・コーヒー         1930


ミス・マープル

35 牧師館の殺人                         1930
36 書斎の死体                         1942
37 動く指                         1943
38 予告殺人                         1950
39 魔術の殺人                         1952
40 ポケットにライ麦を         1953
41 パディントン発4時50分 1957
42 鏡は横にひび割れて         1962
43 カリブ海の秘密                 1964
44 バートラム・ホテルにて 1965
45 復讐の女神                         1971
46 スリーピング・マーダー 1976


トミー&タペンス
47 秘密機関                         1922
48 NかMか                         1941
49 親指のうずき                         1968
50 運命の裏木戸                         1973


51 ポアロ登場                 1924
52 おしどり探偵                 1929
53 謎のクィン氏                 1930
54 火曜クラブ                 1932
55 死の猟犬                 1933
56 リスタデール卿の謎 1934
57 パーカー・パイン登場         1934
58 死人の鏡                 1937
59 黄色いアイリス         1939
60 ヘラクレスの冒険         1947
61 愛の探偵たち                 1950
62 教会で死んだ男         1951
63 クリスマス・プディングの冒険 1960
64 マン島の黄金                 1997

戯曲
65 ブラック・コーヒー         1930
66 ねずみとり                         1952
67 検察側の証人                         1953
68 蜘蛛の巣                         1954
69 招かれざる客                         1958
70 海浜の午後                         1962
71 アクナーテン                         1973

72 茶色の服の男                         1924
73 チムニーズ館の秘密         1925
74 七つの時計                         1929
75 愛の旋律                                 1930
76 シタフォードの秘密         1931
77 未完の肖像                         1934
78 なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? 1934
79 殺人は容易だ                         1939
80 そして誰もいなくなった 1939
81 春にして君を離れ                 1944
82 ゼロ時間へ                         1944
83 死が最後にやってくる         1945
84 忘られぬ死                         1945
85 さあ、あなたの暮らしぶりを話して 1946
86 暗い抱擁                                 1947
87 ねじれた家                         1949
88 バグダッドの秘密                 1951
89 娘は娘                                 1952
90 死への旅                                 1955
91 愛の重さ                                 1956
92 無実はさいなむ                 1958
93 蒼ざめた馬                         1961
94 ベツレヘムの星                 1965
95 終りなき夜に生れつく         1967
96 フランクフルトへの乗客 1970
97 アガサ・クリスティー自伝/上 1977
98 アガサ・クリスティー自伝/下
99 アガサ・クリスティー99の謎         2004
100 アガサ・クリスティー百科事典 2004
101 アガサ・クリスティーの秘密ノート/上 2009
102 アガサ・クリスティーの秘密ノート/下

2024/08/23

『新版 枕草子』 上巻

新版 枕草子 上巻 現代語訳付き (角川文庫 黄 26-1)

『新版 枕草子』上巻
清少納言
石田穣二 訳注
角川ソフィア文庫

『光る君へ』から『枕草子』を読み始めました。
角川ソフィア文庫からは今年、河添房江、津島知明訳注『新訂版』が出てますが、こちらは昭和54年(1979年)初版、石田穣二訳注『新版』です。
原文、補注、現代語訳という順番に並んでいるんですが、細かい注釈まで確認しながら読んでいると時間がかかるので途中から現代語訳だけ読んで気になる箇所の注釈をチェックするという感じで読み進めました。

個人的には『源氏物語』より『枕草子』派であり、中高生の頃は古文も大好きだったので受験勉強もかねて『枕草子』は何度か現代語訳も原文も部分的に読んでいます。
しかし、『光る君へ』を見るまでは『枕草子』は清少納言が「私って知性も教養もあってセンスもいいでしょ!」と自画自賛するエッセイだと思っておりました。
(橋本治の桃尻語訳『枕草子』の「春ってあけぼのよね!」のイメージは今思えばわりと正しい気がする。)

中宮定子に仕えたのが清少納言、中宮彰子に仕えたのが紫式部との知識はありましたが、同時期のライバルで、『枕草子』と『源氏物語』も後宮の自慢合戦かと思っていました。
なので中宮定子の背景を知ってから読むと、だいぶ印象が変わります。

たとえば〔五〕の「大進生昌が家に、宮の出でさせたまふに」の章。
生昌の家の門が小さくて車が通れないとか、生昌の訛りを女房たちが上から目線で笑ったりしているんですが、これは時期的に中宮定子が二人目の子供の出産のために生昌の家に移動してるんですよね。すでに父道隆はなく、実家も焼失しているのでしかたなくの生昌邸なわけです。そんな状態で迎えいれてくれた生昌のことをよく馬鹿にできるなあと思うのですが、同時にそういう境遇だからこそ、この状況を笑い話として語っているとも見えるわけです。

そして道隆在位の頃の中宮定子サロンの雅なこと。
〔二十〕
高欄のもとに、青き瓶の大きなるを据ゑて、桜のいみじうおもしろき枝の五尺ばかりなるを、いと多くさしたれば、高欄の外まで咲きこぼれたる昼つ方、大納言殿、桜の直衣のすこしなよらかなるに、濃き紫の固紋の指貫、白き御衣ども、上には濃き綾のいとあざやなるを出してまゐりたまへるに、
御簾の内に、女房、桜の唐衣どもくつろかに脱ぎ垂れて、藤、山吹など、色々このましうて、

この二十章(本によって章の分類は多少異なります)に出てくる道隆の歌、
「ただ今の関白殿、三位の中将と聞えける時、
潮の満ついつもの浦のいつもいつも君をば深く思ふはやわが
という歌の末を、『頼むはやわが』と書きたまへりけるをなむ、いみじうめでさせためひける」
これが『光る君へ』で最後に定子と清少納言が「いつもいつも」と笑いあっていた歌ですね~。

古今和歌集を『なんの月、なになにの時に、誰それの詠んだ歌は、なんという歌か』と当てさせた村上天皇の話とか、宇津保物語の登場人物について涼と仲忠のどっちがいいか女房たちが語っていたり、定子サロンの文学レベル高い。

藤原公任との和歌の交換や、藤原斉信や藤原行成との恋愛ゲーム的なエピソードなどもあったり。
貴公子たちとの雅な戯れは書いても前夫の則光や恋人の実方についてはサラッとしか書いてないんですね。

石田穣二訳注『新版』は昔の版なので現代語訳や補注の部分はちょっと読みにくかったりするんですが、解説が勉強になりました。
「~もの」形式は清少納言がひとりで書き上げたものではなく、女房たちの知的遊戯がベースとしてあって、複数の参加によってできたものではないかという指摘は納得でした。
また、中宮定子の悲運については書かず、「負の世界はきれいに切り捨てられている」という部分は『光る君へ』ともつながる話でおもしろかったです。

442
「それは、作者にとって、政治の世界で敗れ、亡んで行ったものなのである。この価値の世界を、作者はきらめくような美しさで描くが、それがきらめくように美しければ美しいほど、異様な険しさと危うさを同時に秘めていると言わなくてはならぬであろう。」

◆関連書籍
清少納言
石田穣二 訳注
角川ソフィア文庫

かさねの色目 平安の配彩美 (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)
『かさねの色目 平安の配彩美』
長崎盛輝 著
青幻舎ビジュアル文庫


2024/08/17

『かさねの色目』

かさねの色目 平安の配彩美 (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)

『かさねの色目 平安の配彩美』
長崎盛輝 著
青幻舎ビジュアル文庫

平安時代に始まる衣の表裏の配色120種、何枚も重ねた衣の配色98種を解説。ベースとなる48色のカラーチップ付き。
『枕草子』の副読本として読んでみました。
『枕草子』の「すさまじきもの(興ざめなもの)」に「三、四月の紅梅の着物」があるのですが、「紅梅」は表紅梅・裏蘇芳の配色で、着用時期は冬春、二月以降は時期はずれとされており、『枕草子』では「3、4月になっても紅梅を着てるなんて」と言ってるわけですね。
逆に、桜の季節の大納言(伊周)の服装については「桜がさねの直衣の少し着なれて萎えたのに、濃い紫の固紋の指貫を召して、下着は白を重ねて、その一番上には濃い紅の綾、そのはっとするような色合いを直衣の下から出してといった服装」と書かれていて、「桜」は表白・裏赤花の配色なので、白、赤、紫といった衣装で伊周、オシャレ!
女房装束は単、重袿(五ツ衣)、打衣、表着、唐衣を重ねるので、最低でも9枚ですね。
五ツ衣は重ねた色を見せるように作られてるそうで、ここだけで5色の配色が並ぶわけです。
「紅紅葉」という配色では、紅、淡朽葉、黄、濃青、淡青、紅と紅葉の様子をかさねている。
自然の色を季節に応じて着るという平安貴族の風流さ! そもそも、ちらっと見える裏地の色にまで気をつかうという着物の美学。
緑と黄色のような配色も多いので、現代でそのまま洋服として着るわけにはいきませんが、季節をファッションに取り込むという精神は見習いたい。


2024/08/12

『イスラエルとは何か』

イスラエルとは何か (平凡社新書)

『イスラエルとは何か』
ヤコヴ・M・ラブキン
菅野賢治 訳
平凡社新書

『ガザとは何か』で紹介されていた一冊。
もともとの自分の世界史知識が不足しているのと、文体が非常に読みにくく、書いてあることのどれほど理解できたのか心許ない。
「イスラエルの民=ユダヤ人=ユダヤ教を信奉する人々」、「聖書で約束された地に帰還するシオニズムは、流謫の民でありホロコーストを経験したユダヤ人にとって長い間の願いであった」といった今までのイメージがことごとく覆されていく内容でありました。
シオニズム自体、ユダヤ人すべてが称賛しているものではなく、むしろ非難されているものであるのですが、この本が書かれた2012年から10年以上経っても現状は変わっていないどころか悪化しているのはなぜなのか。
そもそもユダヤ人とは誰なのか。イスラエル人とは誰なのか。彼らはなぜ流謫の民であらねばならなかったのか。


◆関連書籍
ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義
大和書房